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ここにも戦場があった

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痛さの悔しさのあまり力が入り過ぎて、小競り合いだったのに、全面戦争状態にしてしまった。私には被害が無いが、果たして帰り道が塞がっていないかどうかが心配になった。

ベランダまできたのだから、レタスを持って帰らなくてはならないが、手にレタスを持って戦場を抜けられるだろうか。私はレタスを外側から五、六枚むしり取ったものに目をやりながら、戦場に赴く戦士のような気持ちになった。

ベランダから娘の部屋に入るために、おそるおそる戸を開けた。そこは空爆にあった軍事施設のようでもあり、一種芸術のような頽廃美があった。一見して形が分かるのは少ない。色々なものが重なりあい、入り乱れ、乱交状態である。

ごみ箱にはCD付ラジオが挿入されていて、うめき声を出している。脱ぎおいたスカートがベッドになっていて、上にはバッグと花瓶が抱き合って、恍惚としている。

小さなクマの人形が二つに開いた雑誌に覆い被さられて、のけぞった顔だけが見える。シャーペンとフェルトペンが野次馬か覗き屋のようにそれらを眺めている。

先程のCD達は酔っぱらったようにだらしなく寝そべっていた。音楽雑誌を入れてあったらしい本棚が倒れ、空っぽになった本棚が雑誌の上で騎乗位になっている。下になっている音楽雑誌も満更ではないらしく、にこにこ顔だ。


作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川