ここにも戦場があった
ふーっと息をついで、ベランダへの戸を開こうとしてカーテンを引くと、頭に衝撃が走った。スコーンと音がして一瞬間をおいてカシャ、ガチャッと何かが背後に落下した。
今度は空軍である。私はヘルメットをしてこなかったことを後悔した。スコーンという音は私の脳を簡易CTして、空洞があることを示して、カシャ、ガチャッの音は落ちたものが四角形であることを物語っていた。
頭を抑えながら、振り向くとTVで見たことがあるアイドルがこちらを見て微笑んでいる。いくら若くて可愛いとはいえ、男に興味はなく、睨み返したのだがそいつは相変わらず微笑んでいる。
カーテンをひいた時に、カーテンの上部がパネル装された写真を刺激したらしい。多分重力を無視して、画鋲で吊り下げてあったのだろう。
まったく娘は学校で何を学んできたのだろうか。そして今短大で何を学んでいるのだろう。私の記憶に間違いが無ければ家政学科だった気がするが。いや先生のせいにするのは良くない。私の教育が悪かったのかもしれない。一人娘ということで甘やかして育ててしまったのだろう。
私は痛さを快感と感じる人間では無いので、鬱憤のやり場を探したが、何も無いのでベランダに出て、勢いよく戸を閉めた。
ズンという低周波音の後に、グァラグラグシャガシャと娘の部屋に音が響きわたった。
作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川