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ここにも戦場があった

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サラダにするレタスをベランダの菜園に取りに行くつもりだったのだが、これが大変である。運動不足か、食べ過ぎか百㎏近い肥満体になってしまい、色々な物が積んである廊下の移動も、カニのように横になり、じわりじわり進まなくてはならなかった。まず2階の台所から3階に上がるための階段への左折が第一関門だった。

まず直進して、トイレと風呂のある右方向には缶詰とドライのキャットフードが積んである。それに触れないように身体を左折させるわけだが、以前手を振りながら左折しようとして、封を切ってあるドライフードの袋を落としてしまった。派手な音と物体の広がり、季節外れの花火のような瞬間芸にした。感心して見ている場合では無かった。

袋が破けていないか確認して、消えてしまうことのない花火を崩しながら袋に戻す。この臭いが良くない。ネコはどうしてこんな臭い臭いの物を食べるのだろう。

せっせと拾い集めているそばに飼い猫のトラさんがやってきて、時間外のオヤツを喜んで食べている。それも隅の方に転がったものを食べてくれればいいのに、私が拾い集めている所を選んで食べているような気がする。

ようやく集め終わろうとした頃、足元の数個を拾おうと腰を上げた途端、缶詰の入った段ボールをお尻で押してしまい、またまた派手な音の花火を上げてしまった。開いていた段ボールだったので、中味の缶がカンカンぶつかり合いながら転げまわったり、私の足に攻撃したりしてきた。猫のトラさんは役にたたず、ギャツと悲鳴を上げて一階へ逃げていった。

逃げる暇もなく、足を押さえてうめく私に助けはいなかった。幸か不幸か妻も娘も家にはいない。坐りこんだまま、缶詰を段ボールにセットし終わっても、すぐには動けない。

私は「前方異常なし、右方接触注意、左方壁少し余裕有り。後方注意」と確認して、そうっと立ち上がったのだった。


作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川