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ここにも戦場があった

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私は状況把握のために左右と正面を見渡した。危険の兆候はあった。洋服ダンスの中に入りきれないというか、入れないで扉の内側にぶら下げてあるコートがハンガーから半分ずり下がって、しどけない姿をしている。一押しでそれは臨戦状態になる。その下には年中使用中の引き出しが口を開けている。中には化粧品か消臭剤かのスプレー缶が入っている。

他にも小さなガラスの小瓶に入った液体がある。特に背の高いスプレー缶が数本は引き出しを閉められない原因だし、倒れやすいだろうと考えていると、涼しい風が顔に当たって私はホッとした。そして「あっ、ベランダへの戸を閉め忘れた」と思ったが遅かった。

気が付いた時には、また戦争が始まってしまった。風に揺られたコートが、パラリとではなくバサッと開けたままの引き出しに落ちた。素材が分厚いか、湿気をすったのかその重爆撃機は娘の補給基地をめちゃめちゃにした。

私は近くによって、そのコートを元に戻したが、被害は甚大だったとは言い難かった。なぜならそこはもともと被害の後みたいだったからだ。

とにかく春の埃を含んだ風を遮断しなければならない。先程ルートは確保してあったので楽ではあるが、やれやれである。

ベランダへの戸を閉め、鍵を掛けた。そういえばもともと鍵は閉まっていなかったのではと疑問が湧いたが、それはどうでもよかった。閉めたとたんに汗が出始めた気がする。

作品名:ここにも戦場があった 作家名:伊達梁川