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僕の村は釣り日和7~消えたメダカ

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「この前の土曜日、お前がスプーンで一番最初に釣った魚は何だよ?」
 東海林君が焦れたように言った。
「もしかして、ウグイ?」
 僕は思い出した。父親が「コイやウグイも他の魚を襲って食べる」と言っていたことを。
 僕は振り返って水槽を眺めた。ウグイは何食わぬ顔で、水槽の中で銀のウロコを輝かせていた。
 そして、放課後を迎える頃には、メダカは一匹もいなくなっていた。水槽の周囲には人だかりができた。
 ある者はお化けの噂に怯え、ある者は首をひねった。
「ウグイ、じゃないかな?」
 僕が恐る恐る言ってみた。すると、すかさず僕の襟首をつかんだ者がいた。小野さんだ。
「何だって? 私が持ってきたウグイにケチつける気かい? ウグイとブラックバスを一緒にしてもらっちゃ困るね」
 男勝りの小野さんが凄む。女子の中でも腕っ節の強い小野さんに睨まれたら大変だ。高田君の時以上にやっかいなことになる。
 それでも僕は自分の考えが間違っているとは思えなかった。
「まあ、待てよ」
 そう言って、助け舟を出してくれたのは高田君だった。
「俺はこの前の土曜日、見たんだ。こいつがルアーでウグイを釣るところをよ。案外、ウグイって獰猛な魚なのかもしれねえぜ」
「そんなことないわよ!」
 小野さんがむきになる。
「よし、そこまで言うのなら、ウグイの解剖をしよう」
 僕は思い立ったように、そう言った。
 女子たちは「きゃーっ」とか「気持ち悪い」とか騒いでいる。
 小野さんがすごい形相で僕をにらんだ。
「もし、メダカが出てこなかったら、どう落とし前つけるつもり?」
「その時は塩焼きか田楽にでもすればいいだけの話だろう?」
 こうなったら僕も後へは引けない。
「あんた、ブラックバス釣るのに魚、食べるんだ?」
 小野さんが皮肉っぽく笑った。
「いいわ。その代わり、もしメダカが出てこなかったら、あんた、このウグイをナマで食べなさいよ。頭から内臓から、尻尾まで全部!」
 小野さんも熱くなっている。小野さんはメダカをすくう網を手にすると、水槽の中のウグイを追いかけ回し始めた。ウグイは「ハヤ」と呼ばれるくらいにすばしっこい。小野さんはやけくそになって、ウグイを追い回している。
「やめろよ」
 東海林君がポツリとつぶやいた。
「そんなことしなくてもわかるぜ。ウグイのケツを見てみな」