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僕の村は釣り日和7~消えたメダカ

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 教室中がざわつく。みんな水槽の前に集まった。
「一、二、三、四、五、六、おかしいな。全部で十匹いたはずなんだけどな」
 水槽の当番として、一応、僕にも責任がある。僕が首をひねっていると、後ろの方から野次が飛んだ。
「桑原、いくら腹が減ったからって、メダカまで食うことはないだろう?」
 一同が大爆笑した。
「それなら、校庭の池にいるコイの方を食うね。メダカじゃ腹の足しにならないよ」
 僕も負けずに言い返した。しかし、メダカはどこへ行ったのだろうか。ウグイは悠々と泳ぎ回り、残りのメダカは居場所を追われたように、慌しく泳ぎ回っている。
「やっぱ、お化けじゃねえの?」
 高田君が手をぶら下げ、おどけた顔で言った。
「真っ昼間から出るかよ」
 誰かの声がした。
「いや、わからんぞ。メダカ好きなお化けかもしれん。夜中になると、きっとウグイも……」
「私の釣ったウグイを食べたら承知しないからね」
 小野さんが顔を膨らませた。高田君はそれでも続けた。
「よく話に聞くだろう? 夜中になると理科室のガイコツが動き出したり、音楽室のピアノがひとりでに鳴りだしたり」
「キャーッ!」
 数名の女子が耳を塞いだ。
 キンコーンカーンコーン。
 始業のチャイムと同時に、クモの子を散らすように水槽の前から離れ、自分の席に着く。
 ガラガラと扉が開き、斎藤先生が入ってきた。
「先生、大ニュースです。メダカが減っちゃったんです。消えちゃったんですよ」
 早速、高田君が席を立ち、先生に事のてんまつを報告した。
「ほう……」
 先生も水槽に近寄って確認する。
「確かに減っているな。まあ、そういうこともあるだろう」
 先生は特にあわてた様子はない。ただ、あごに手を当て、ひとりで頷いているだけだ。
「やっぱり、お化けですか?」
 調子に乗った高田君が、更に続けた。
「あるいはそうかもしれんぞ。悪さをする子はメダカみたいに食べられちゃうから、みんな気を付けるようにな」
 先生は笑いながら言った。
 僕は東海林君の腕を突っついた。彼ならば、メダカが消えた理由を知っているだろうと思ったのだ。
 東海林君はニヤリと笑った。
「この前、竜山湖でお前のお父さん、何て言っていたっけ?」
「えーと……」
 あの日はいろいろな話をしたから、どの話を思い出せばいいのかすぐに浮かばない。