ありがとう
そして、顔を上げて前に進もうとした時。強い光が僕も背中の方から差し込んだ。
「おい、生存者がいたぞ!」
誰かが背中の方で叫んでいる。と思う間もなく足を掴まれた。
「大丈夫ですか! 怪我はありませんか! どこか挟まれたりしていませんか!」
声の大きさとは裏腹に掴まれた足を叩く力は優しいものだった。
僕は、ああ助けが来たんだ、と思った。
「はい、大丈夫です。どこも挟まれはいません」
僕の声を確認した後、僕の身体はゆっくりと足の方から引っ張れた。頭の上に瓦礫が無いところまで引き出されると僕は自分で身体を仰向けにした。強い光が目に入って痛いほどだった。
周りで「ああよかった」とか「よっしゃ!」という声が行き交う。
「おい、担架を持って来い!」
リーダーと思しき人が叫ぶ。
「あの、ちょっと待ってください」
僕は立ち上がってそのリーダーらしき人に話しかけた。
「この先にもう一人居るんです。なんか腰の辺りに乗っかっていて動けないみたいで――」
「そうですか。でも、もう少し瓦礫をどかさないと……。それよりあなたは早く病院に行って検査を受けてください」
振り返ると瓦礫は堆く重なってまるで壁の様にも見えた。
「そうですか……。でも、その人、下半身の感覚が無いって。それにとても弱っていたみたいなんです」
僕はリーダーらしき人の肩を掴んで訴えた。
「そうですか、しかし――」
「ロープは無いですか。それと何かジャッキの様なもの。あの人腰が潰れてたら生きている訳が無いでしょ。だから少し持ち上げれば引っ張れるんじゃないかと思うんです」
「しかし、失礼だが貴方は小柄だから引っ張り出せましたが我々隊員では装備を外しても入り込めるかどうか」
確かに、オレンジ色の服を着た人達は立派な体格をしていた。更に、彼らは鍛えてもいる様で、皆服の上から見ても筋肉が有り余っている様に見えた。