夏色のひみつ
友だち
それからおばあちゃんやなっちゃんと茶の間でゆっくり話をした。
「春海も大変だね。群馬のおばあちゃんの具合はよっぽど悪いのかい?」
春海っていうのはわたしの母さんの名前。なっちゃんは夏海って言う。
「ううん。思ったほどひどくないみたい。だから、今日までは近所の人が交代でみてくれてたの。お母さんはさっき東京駅でわたしを見送ってから、向こうにむかったわ」
そのあとはいろいろ質問攻めになった。なにしろ七年ぶりにあったから、学校のことや友達のことや好きな食べ物から……、おばあちゃんは立て続けに聞いてきた。
わたしはオレンジジュースをおかわりして、おいしいあげせんべいをぼりぼりほおばりながら、しゃべり続けた。
なっちゃんはそのあいだ、面白そうにうなずきながら聞いていた。
少し日が傾いたころ、なっちゃんと海に行った。おじいちゃんが船を出すところをみるために。
おじいちゃんの船は海老網をかけるので、小さな船だ。夕方その網を海にいれておき、次の日の朝引き上げに行く。
「おじいちゃん」
わたしは網を船に積んでいるおじいちゃんに声をかけた。日に焼けて真っ黒で、おでこに深いシワが三本ある。
「……まゆか?」
おじいちゃんは最初きょとんとしたけど、すぐにわたしだってわかってくれた。
「まゆが来たからにゃあ、でっかい伊勢エビをとらなきゃなあ」
そういっておじいちゃんは船を出した。
それからなっちゃんとふたりで、砂浜の方まで散歩した。海の風が気持ちよかった。
「夏海せんせ」
ふたりの女の子が声をかけてきた。わたしと同じくらいかな?
「あら、ゆきちゃんとなみちゃん」
「ここであえてよかった。わたしたち、夏休みの課題で昔のことを調べているんです」
お下げ髪の小柄な子が言うと、ショートカットの少し背の高い子が続けた。
「それで、いろいろ教えてほしいことがあるんですけど……」
「ん、じゃあ、明日土曜日だから、うちにいらっしゃい。昔のことって言っても色々あるから、なにがいいか……。資料を見せてあげる」
「ありがとうございます」
ふたりはなっちゃんにお礼を言いながらも、わたしが気になるらしく、チラチラと見ていた。
「ああ、まゆ。ふたりともあなたと同じ四年生よ。ここにいる間、いっしょに遊んだら? わたしの姪のまゆ。よろしくね」
そうしてなっちゃんはわたしにふたりを紹介してくれた。お下げの子がゆきちゃんで、ショートカットの子がなみちゃん。