夏色のひみつ
佐藤さんにおんぶされてわたしが帰ると、朝ご飯のしたくをしていたなっちゃんがでてきた。
「まあ、まゆ。浜に行ってたんじゃなかったの。すみません。佐藤さん。ご迷惑をかけて」
おばあちゃんたちはまだ浜からもどっていない。ここでちょっと佐藤さんを引き留めなきゃならなかった。
なぜって、なっちゃんだけじゃ、佐藤さんはすぐに帰ってしまうから。
「今日はジョギングするから浜には行かないっていったの」
わたしはいかにも痛そうな顔をしながら答えた。
「急にそんなことするから、足をくじいたりするのよ。部屋まで歩ける?」
「あ、だめ。痛い」
「あ、あの、じゃあぼくが部屋までつれていきましょう」
佐藤さんはまたわたしをおんぶしてくれた。してやったり。
「もう、まゆったら。佐藤さん、ほんとにすみません」
とりあえず、茶の間に連れて行ってもらった。
「じゃあ、これで」
佐藤さんはすぐに出ていこうとしたけど、その時はなっちゃんが引き留めた。
「冷たいものでも一杯飲んでいってください。本当にありがとうございました」
「は、はあ、どうも」
なっちゃんの前だと佐藤さんはあがっちゃうみたいだ。顔を真っ赤にしている。
そこへちょうどおばあちゃんが浜からあがってきた。ナイスタイミングだ。
「まあ、まあ、これはどうも申し訳ありませんでしたね」
いきさつを説明すると、おばあちゃんは佐藤さんに深々と頭を下げた。
「よかったら、朝ご飯を食べてって下さいな」
そうそう、その言葉を待ってたの。おばあちゃんならきっとそういうだろうと思って。
佐藤さんは遠慮していたけど、みんなで勧めて、いっしょにご飯を食べることになった。
出勤前なので、そんなにゆっくりもしていられないので、佐藤さんは食べ終わるとすぐに帰っていったけど、でもこれで、なっちゃんとおしゃべりするきっかけはできたはず。