夏色のひみつ
本当のことがわかったけど、わたしはそれほどショックを感じてはいないことに気がついた。
きっと、お父さんもお母さんも本当の子どものように可愛がってくれたからだと思う。
それよりもなっちゃんのつらい気持ちを考えると、胸がきりきり痛んだ。
おばあちゃんもおじいちゃんもみんながつらい思いをして選んだ「一番良い方法」だったはずなのに、なっちゃんの心の傷だけがずうっと残っていた。
ううん、傷はもっともっと深くなっていた。
そんななっちゃんの気持ちを一番理解していたのはお母さんなんだ。
みんなの気持ちが悲しかった。
やっぱり、なっちゃんには幸せになってもらわなくちゃいけない。
悲しい秘密なんかもっていちゃいけないんだ。
わたしは涙をふいて、そう決心した。
こがね丸が成仏(?)するのも、なっちゃんが幸せになるかどうかにかかってる。
わたしはまわりのみんなが目を丸くするくらい明るくふるまって、元気なところを見せた。なっちゃんはわたしが無理しているんじゃないかと言うような、心配した顔をしていたけど。
「なっちゃん。わたしにとってなっちゃんはなっちゃんだよ」
出勤していくなっちゃんを門のそばで見送りながらそう言った。そうして、
「産んでくれてありがとう」
ちょっと涙ぐんじゃったのは失敗だったけど、精一杯の笑顔でそう言った。
なっちゃんは泣きそうになるのをこらえながら、やっぱり最高の笑顔を見せてくれた。
なっちゃんの後ろ姿を見送ると、
「さあて、行動開始だわ。こがね丸、わたしがんばるからね」
と、力こぶを作った。木立の中で白っぽい影がゆらりとゆれた。