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森と少女~forest

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シーン3(森の警備隊)


 明転。木陰で眠っているアリス。その隣で眠っているウサギ。
 森の警備隊登場のパフォーマンス。登場が終わったところで全体整列のパフォーマンス、一斉にトランペットを鳴らす。

アリス「(慌てて跳ね起きて)きゃっ!?」
ウサギ「(慌てて跳ね起きて)わぁっ!?」/アリスとウサギの悲鳴は同時に
隊長 「(悲鳴で初めてアリスとウサギに気付いて)むむっ!?」

 隊長、木陰の方を覗き込む。アリスとウサギを指さして、

隊長 「おまえら! そこで何をしている!」

 怒鳴る隊長。二人は慌てて立ち上がる。アリスは大袈裟に身震いする。ウサギはアリスを庇うように前に立って、

ウサギ「(激しい身振り手振りを交えながら)隊長さん、ぼくだよ、森のウサギだよ。忘れちゃったの?」
隊長 「(腰を曲げて、ウサギを覗き込むような素振り)ふむ? 確かにおまえは見たことがあるな(直立して腕組み)そこで何をしていた?」
ウサギ「(呆れたような口調)寝てたのを、隊長さん達にたたき起こされたんじゃないか。見ればわかるでしょ?」
隊長 「(ウサギの最後の台詞に重なるように)いいやわからん」
ウサギ「(さらに呆れたような口調)隊長さん」
隊長 「ふん(どこか楽しそうに)怪しいな」

 隊長、腕組みを解いてウサギに一歩詰め寄る。
 隊長とウサギの会話中、アリスは少しずつ後ろに下がっていく。

隊長 「何でこんなところで眠っていたんだ? このあたりはおまえが来るようなところではないぞ。おまけにベッドもない。ただ眠っていただけなんて言い訳が通用すると思うなよ」
ウサギ「(疲れたように肩を落として)言い訳じゃないってば。本当に寝てただけ(ここで隊長をからかうような口調になって)まさか隊長さん、この世界のどこにでも、いつでも安らかに眠れるベッドがあるなんて言うつもり?」
隊長 「ぐっ(言葉に詰まり、半歩後退って)……ふん! 引っ込まないのは長い耳と出っ歯だけかと思っていたが、減らず口まで同じらしいな」
ウサギ「(怒って)誰が出っ歯だよ! この前歯はとっても大事な」
隊長 「(ウサギの台詞を遮って、大声で叫ぶ)しかし!」

 後ろに下がり続けていたアリス、隊長の大声でびくっと震えて立ち止まる。
 隊長は背伸びや体を左右に揺らすなどして、ウサギが背後に庇っているアリスをじろじろと覗き込み、

隊長 「(楽しそうに、にやにやと笑いながら、ゆっくりとした口調で)ウサギのことはいいとしよう。しかし、そっちの奴は見たことがないな(突然厳しい表情、アリスを指さして怒鳴り声で)おい、そこのおまえ! 名前は何という!」
アリス「あ、あの……(口を動かすだけで声にはならない。怯えた様子で俯いてしまい)」
隊長 「なぜ名前を言えないんだ?(何かに気付いたような様子、にやりと笑って)ははぁん。さてはおまえ、この森に忍び込もうとしていたんだな?」
ウサギ「(慌てて)ち、違うよ、隊長さん。この子はぼくの知り合いで」
隊長 「(ウサギの台詞を大声で遮る)おまえには聞いてない!(アリスを指さして)そっちの怪しい奴に聞いてるんだ。おい、おまえ。どうして名前を言えないんだ? 何か理由でもあるのか?」
アリス「(首を左右に振る。何か言いかけるが、結局言葉にできず)」
隊長 「自分の名前も言えないとはな。怪しい奴め、よっぽど捕まえて欲しいらしい」

 アリスに向かって歩き出す隊長。

ウサギ「(隊長の前に立ちはだかって、両手を広げてアリスを守るように)ちょっと、ちょっと待ってよ隊長さん。この子はぼくの友達で、森の住民票を」
隊長 「(ウサギの台詞を遮って)うるさい、どけ! 邪魔するならおまえも捕まえてしまうぞ!」

 ウサギを押し退けようとする隊長。
 二人が押し合っているうちに、アリスは隊長を大回りして避け、舞台の反対側へ走っていく。

隊長 「(アリスを指さし、ウサギの方に振り返って)何で逃げるんだ! 怪しい奴じゃないというのなら、逃げる必要はないだろう!」
ウサギ「隊長さんがそんな怖い顔で追いかければ、誰だって逃げるに決まってるじゃないか!」
隊長 「俺はあいつが逃げるから追いかけるのだ!(ウサギに背を向けて、アリスの方へと歩いていく)」
ウサギ「(隊長の後を追いかけて、服を掴み)ちょっと待ってってば!(思いっきり隊長の服を引っぱる)」
隊長 「なぁっ!?(勢いよく転ぶ)」

 ウサギとアリス、一度顔を見合わせる。

ウサギ「(心配そうに)大丈夫かな……」

 アリスが心配そうな顔で隊長に近付いていくと、突然隊長が起き上がる。アリスとウサギは驚いて隊長から離れる。隊長はウサギの方に向き直って、

隊長 「大丈夫なわけがあるか!」
ウサギ「あはは……そう?(愛想笑いをしながら、じりじりと後退)」
隊長 「ウサギめ、どうしても俺の邪魔をするというのなら、まずはおまえから捕まえてやる!(ウサギの方に乱暴な足音を立てて歩いていく)」
アリス「(慌てて隊長の方に駆け寄り、服を掴んで)やめて!(思いっきり隊長の服を引っぱる)」
隊長 「のぉっ!?(勢いよく転ぶ)」

 ウサギとアリス、互いに顔を見合わせて一度頷くと、そろそろと舞台の左右にそれぞれ去ろうとする。隊長が突然起き上がり、ウサギとアリスをそれぞれ指さして、

隊長 「もう許さん! 二人とも捕まえて、牢屋に入れてやる!」

 アリスとウサギを巻き込んだパフォーマンス。
 隊長と警備隊に追いつめられるアリスとウサギ。二人はそれぞれ別方向に逃げていくが、最終的には二人一組になる。隊長に追いつめられ、警備隊に囲まれるアリスとウサギ。隊長が腕を伸ばそうとしたとき、アリスは目を瞑って意を決したように、

アリス「(大声で)アリス!」

 静まりかえる。隊長、呆気にとられたような顔で、

隊長 「アリス? ……そ、それがおまえの名前か?」
アリス「(目を開けて、俯き加減に。しかし視線は隊長に向いて)はい(しばらく間を置いて)私、アリスっていいます」
隊長 「アリス……アリス(腕組み、しばらく思案顔で。ふと何かを思い出したようにぽん、と手を鳴らして)ではおまえが、この森の住民表に登録しにきたという、人間の少女か?」
アリス「(答えられず)え……?」
ウサギ「(アリスの前に立って、不満そうな様子で)だから、ぼくがそう言おうとしてたじゃない。怒鳴ってるばかりじゃなくて、ちゃんと人の話は最後まで聞いてよね」
隊長 「む……お、おまえらが怪しい素振りなど見せなければよかったのだ!(怒鳴ってから、二人の視線に気付いて気まずそうに咳払い。わざとらしく二人に背中を向けて)ともかく。おまえがアリスなら、話は聞いている。この森の住民票に登録されていない人間は、今のところおまえだけだからな」
ウサギ「(アリスの方を見て)アリス。アリスがこの森で暮らしていくには、住民票に登録して、きちんとした資格をとらなきゃいけないんだよ」
アリス「(困惑した様子で)そんな、資格だなんて……どうやってとったらいいの?」
ウサギ「それはね、この森の奥に」
隊長 「(ウサギの台詞を遮って、二人の間に割り込むように)それはこの森の奥に一人で行けばいいのだ。簡単だろう?」
作品名:森と少女~forest 作家名:名寄椋司