ペッパーミント
そんな話を挟んでいるうちに十分近く過ぎてしまった。
息を切らして、ミドリさんがやって来た。
「お待たせー」
「ああ良かった。私、時間を間違えたかと思ったけど、メールしたのは私だし。これは
事故か、はたまた誘拐かって心配しました」
「相変わらずだね、モモコ。理由は、道路にぶちまけた商品を拾うのを手伝っていたから。
あ、でも連絡しなくてごめん。時間までには間に合う予定だったから」
「予定?」
「あーー。ばらしちゃうと、いつもここにモモコが来るの見てたんだ。それから『おっ来た来た』って登場」
「はたまたどうして?」
「私が先に居ると、見えた時からどひょーって走って来るでしょ。街中を突っ切って。
人の肩にぶつかって。危なっかしいから、モモコは」
「そんなとこ見たことないくせに」
「高校の時、そうだった。何か思いつくと、階段だろうが、廊下だろうが、指導部の先生の前だろうがお構いなし。ほんと危なっかしい」
「ちゃんと信号は止まるよ」
「当たり前でしょ。それができないなら家まで迎えに行くよ。それにここが見えるところには、信号機はないでしょ」
「すごいね、ミドリ。そんなことまで考えているなんて」
「そっかな。(モモコだからだよ)」
ミドリさんが、こんなにもモモコさんをかばうのは、自分が時間を間違えたとき、モモコさんの心遣いが嬉しかったからだ。映画館にはいっても人目を気にせず、傍に居てくれたり、ずっと握られていた手が、柔らかく不安になった気持ちをほっとさせた。