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予感 -糸-

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だけど……。
次の日も 優しい彼は、忙しく仕事をしているようで 連絡がつかなかった。
もう一度、携帯電話でメールを送ったけれど その返事も返ってきていない。
三度目の『切れる』は『赤い糸』になってしまったのかと 彼からの届かない言葉は、彼女にはその暗示のように思えて仕方がなかった。

彼女は、仕事から帰ったそのままの服装で インスタント珈琲を淹れ、カウンターテーブルの端に腰掛けた。
ふうふうーっと珈琲を口元で冷ますのが、「ふぅ」とため息に変わる。
いつしか珈琲は、飲み頃を過ぎ、唇に感じる温もりも冷めてしまった。
彼女は、何度も着信もない携帯電話を見た。彼からのここ最近の着信履歴を見直した。
手に感じていたカップの温もりすら もう冷えてしまっていた。
(電話 掛けてみようかなぁ)

電話は、いつも彼がかけるのが 付き合い始めからの約束。メールもほとんど彼からばかりで 彼女からのメールは、件名に『Re:』があるものばかり。そんな約束も付き合い始めの頃には、彼から思われてるようで、あたりまえに思っていた。
彼女が「私が、寂しいなって思うとメールが届くのよ」と以前に、女友だちに嬉しそうに話していたこともあったくらいだ。

カウンターテーブルに携帯電話を置き、冷めた珈琲をシンクに捨てた。
なんとか着替える気を起こし、寝室である部屋へと行った。
クローゼットから湯上り後の着替えを腕に抱え、リビングに戻ると携帯電話に着信のランプが点っていた。
彼女は、腕に抱えているものを床に落とし、飛びつくように携帯電話を開いた。
彼からだ。待っていた彼からのメールだった。

(糸……切れてなかった?)
けれど、彼女は、そのメールを見るのが怖くて、一度 瞼をぎゅっと閉じた。
目を開け、ふうっと気持ちを落ち着けるように 息を吐いてメールを見た。

作品名:予感 -糸- 作家名:甜茶