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僕の村は釣り日和5~竜山湖の事実

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「そのとおりだよ。その葦を人間は刈ってコンクリートで固めてしまった。これでは小魚も減るだろう」
「在来魚の減少は、何もブラックバスだけのせいじゃないってことですよね」
 東海林君が僕の父親に同意を求める。
「私もそう思うよ。ブラックバスは確かに魚食性の魚だが、遊泳力の強い魚ではないから、魚の捕食率は低いと考えた方がいいだろう。むしろアメリカザリガニなどの甲殻類や、カエルなどの両生類などの方が簡単に捕食できるはずだ」
「それじゃあ、ブラックバスの害魚論は濡れ衣ってわけ?」
 僕は父の方を向き、問いただすように言った。その口調は少々きつかったかもしれない。
「さあ、それはわからん。ただ、小魚が減っている理由のすべてをブラックバスのせいにするのはどうかと思うね」
 父は携帯灰皿を取り出すと、おもむろにタバコに火を点けた。めったに子供の近くではタバコを吸わない父が、この時ばかりは我慢できないように肺に煙を吸い込んだ。
「そんなの筋が通らないよ」
 僕は風で波が立ち、魚のウロコのように輝く湖面を眺めながらつぶやいた。
「大人の世界なんて筋の通らないことばかりさ……」
 父が吐き捨てるようにつぶやいた。めったに愚痴を言わない父がこんなことを口にするのは珍しい。
「人間は自分の犯した過ちのすべてを認めたくないんだよ。だからいつも弱者に責任を押し付ける。ブラックバス問題だってそうさ。確かにヤミ放流などの問題はあるが、持ち込んだのは人間だ。それをただ駆除すれば済むという簡単な問題ではないだろうな」
 父は既に二本目のタバコに火を点けている。まるでストレスを吐き出すように、言葉と煙を吐き出した。おそらく父も会社で道理の通らない理不尽な体験をたくさんしているに違いない。僕や母の前では一切、愚痴をこぼさない父だが、ブラックバス問題を通じて大人の社会の嫌な一面をかいま見たような気がした。
「ブラックバスは勝手に人間の手で日本に誘拐されて、用済みになったら殺されるわけか。人間なら誘拐殺人だな。それにもともとブラックバスは日米親善のために移植された魚だぜ。人間の身勝手にも程があるっていうもんだ」
 東海林君が吐き捨てるように言った。その目はやり場のない怒りをたたえている。
「この湖は漁協がブラックバスの存在を認めているみたいだけど、他の湖や池ではやっぱり殺されちゃうのかな?」