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僕の村は釣り日和4~賛美歌

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「会社じゃないんだよ。釣りだよ、釣り!」
 僕が大きな声を耳元で上げると、ハッとしたように父が跳び起きた。
「ああ、そうだったな。支度でもするか」
 父はヒバリの巣のようになった頭をかきながら、あくびをすると、ベッドから足を降ろした。
 ポールさんはまだ寝ていた。僕たちを見送ってくれたのはキャサリンさんだった。
 父はハンドルを握り、車を竜山湖へと走らせる。昨日のお酒が残っていないか心配だったが、僕の父はかなりの酒豪だ。ふだんは母にお酒の量を抑えられているだけである。おそらく心配はないだろう。
 竜山湖は朝日にキラキラと輝いていた。昼間とも夕暮れとも違う、すがすがしい湖面の青だ。
 父は昨日と同じ場所に車を停めた。
 釣り支度をする前に、東海林君と僕は早速水の中を覗き込んだ。透明な水に5、6センチ程の小さな魚が群れを成して泳いでいるのが見える。
「ワカサギだ!」
 東海林君が叫んだ。
「そう、ワカサギだよ。使うルアーは何にするか、君ならわかるだろう?」
 父の声が背後からした。
「もちろんミノーです」
 東海林さんが振り返って、目を輝かせながら答えた。
 父の手には既にミノーが握られていた。小魚の形をしたルアーだ。
「これはラピッドというルアーのワカサギカラーさ。もともと渓流用に開発されたルアーなんだけど、どうも今のワカサギと同じくらいのサイズだし、動きもいい。使ってみるかい?」
 僕も東海林君も父親からラピッドを受け取ると、急いで車へと戻った。もちろん釣り支度をするためである。
 東海林君は相変わらず支度が早かった。僕がまだルアーに糸を結んでいる間に、もう岸辺でルアーを投げている。
 父も早々に支度を済ませ、ミノーを投げ始めているではないか。僕は少しあせりながらも、ていねいに糸を結んだ。
 僕が岸辺に着いた時、二人は黙々とリールを巻いていた。時折、竿先をツンツンと動かしている。
 僕もルアーを投げ、二人のまねをしてみる。だが、ミノーはすぐに足元に戻ってきてしまう。
 よく見ると、東海林君は時々、リールを巻く手を休めたりしている。
「ヒット!」