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僕の村は釣り日和4~賛美歌

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 その夜は早めに床についた。翌朝は早くから釣りをするらしい。だがポールさんと父はテラスで何やら話をしている。時折、英語交じりの会話が聞こえた。
「なあ、さっきの賛美歌、すごくよかったよ」
 僕は隣のベッドに横たわる東海林君に話しかけた。
「ああ、あれね。教会でよく聞いていてさ。自然と覚えちゃったんだ。俺は洗礼も受けていないし、心の底から神様を信じているわけじゃないけど、あの曲は好きなんだよな」
 東海林君が天井を見つめながら言った。
「ギターはどこで覚えたの?」
「お父さんのギターを触っているうちにね。最初は見よう見まねで、そのうち教本を買ってきて独学で覚えたのさ」
「もしかしてギターで賛美歌を歌ったのは、お父さんへの報告だったんじゃないの?」
「ピンポン。ご名答だよ。お父さんが釣ったバスは52センチが最高だった。俺はそれを1センチ上回る53センチを釣ったんだ。ついにお父さんを越えたぞ。でも、これもお前のお父さんのお陰だよ」
 東海林君が僕の方を向いてニッコリと笑った。その笑顔は心の底から感謝をしているような笑顔だった。
「ああ、心地いい疲れだな」
 東海林君があくびをしながら、体を伸ばした。僕もつられてあくびをする。自然と涙が出る。あくびをすると涙が出るのはなぜだろうか。
 いつの間にか東海林君の寝息が聞こえた。規則的に繰り返される呼吸は、子守歌のように僕を眠りへと誘った。自然とまぶたが重くなる。
 外で豪快な笑い声が聞こえたような気もする。しかし羊を数える必要はなかった。

 翌朝は四時過ぎには目が覚めた。心なしか右手が痛い。昨日、たくさんブラックバスを釣ったせいで、筋肉痛にでもなったのだろうか。
 僕がモゾモゾと動き出したので、東海林君も目を覚ましたようだ。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
 東海林君は眠たそうな目をこすったが、すぐにパチッと目を開いた。おそらく早朝の釣りがしたくてウズウズしているはずだ。朝とか夕方はよく魚が釣れる時間帯なのだ。
 父は深酒が過ぎたのか、ゴーゴーといびきをかいて寝ている。だが父が車を出してくれなければ釣りはできない。少々かわいそうな気もしたが、僕は父の体を揺すった。
「お父さん、朝だよ。釣りに行こうよ」
「うーん。もう少し……」
 寝ぼけた声で父が返す。半分開いた目もまた閉じてしまった。