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僕の村は釣り日和4~賛美歌

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「そうだな。泳ぐスピードはブラックバスよりはるかに速い。それにニジマスは湖を回遊しているんだ。ふだん泳いでいる層もワカサギと一致する。漁協関係者の中にはブラックバスのせいでワカサギが減ったと言う人もいるけど、この湖のワカサギを食べているのはブラックバスより、むしろこのニジマスかもしれないな」
「他にも小魚を食べる魚っているの?」
 僕は身近なニジマスという魚が、他の魚を襲って食べるという事実を知って、少なからず衝撃を受けた。あのイクラやミミズで釣ったニジマスが、そんな凶暴な魚には思えなかったからである。だからもっと身近なところにも他の魚を襲う魚がいてもおかしくはないだろう。
「そりゃいるさ。日本にだってイワナやヤマメ、ナマズにハス、ウナギ……。数えればきりがないよ。それにふだん魚を食べないと思われているコイやウグイだって小魚を襲うことがある」
「コイやウグイが?」
 僕には信じられなかった。あのおとなしそうなコイやウグイが他の魚を襲って食べるなんて。
「そうさ。食物連鎖って言葉を知っているだろう?」
「うん。食って、食われてってことでしょ?」
「そうさ。ブラックバスの卵だって、けっこう他の魚に食べられているらしいよ」
 ウグイがイクラで釣れるならば、ウグイがブラックバスの卵を突っついてもおかしくはないだろう。
「それにブラックバスの稚魚は共食いもするしな。そんなに繁殖力が旺盛とは思えないんだけど、イメージ的に悪者にされている感じがするなぁ」
 東海林君がため息交じりに言った。
「よいしょ」
 僕がニジマスのエラに指を入れ、持ち上げた。ずっしりとした重量感が手だけではなく、腰や足にも伝わる。もうすぐ息絶えようとしているニジマスの口がわずかに動いていた。
「これをおみやげにしたら、ポールさんたち喜ぶぞ」
 父親が笑った。僕も得意そうな顔でニジマスを眺めた。赤紫のラインが美しかった。
 でも不思議だった。なぜトゥイッチもポーズもろくにできない僕のミノーに食らいついたのだろうか。
「何で、僕のミノーにこいつは食らいついたのだろう?」
 僕は素朴な疑問をそのままぶつけてみた。
「健也はリールを巻くスピードが速すぎたんだろう。あのスピードではバスは追いつけない。たまたま回遊してきたニジマスが食らいついたんだろうな」
「そうか」