僕の村は釣り日和4~賛美歌
僕は自分のテクニックで釣ったのではないような気がして、少しがっかりした。
「まあ、運も実力のうちさ」
東海林君が僕の肩を叩いた。僕は振り返って笑顔を返した。ニジマスの重みが心地よかった。
ペンションに戻ると、ポールさんもキャサリンさんも僕の釣り上げたニジマスを喜んで受け取ってくれた。
「オー、ビッグなレインボーね。これ、スモークすると最高!」
ポールさんはニジマスにキスをしながら喜んでいる。
僕たちはペンションで朝食を済ませた後、村へ帰ることにした。
ペンションを去る時、ポールさんもキャサリンさんも僕たちを抱き締めてくれた。一晩宿を借りただけなのに、何だか何年も長い付き合いをしているようで、別れが少し寂しい気がした。何だか、ずっと東海林君とここにいたいような気もした。それでも母の顔がまぶたに浮かぶと、家にも帰りたい。複雑な心境だった。
作品名:僕の村は釣り日和4~賛美歌 作家名:栗原 峰幸