小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ドーナツが世界にあふれる朝

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

 そこには捻ってあって溶かした砂糖がたっぷりと艶やかに掛かっているものや、チョコクリームの詰まった丸いのに白いパウダーシュガーが掛かったものが載っている。
「君の言っている事も真実ではある」タカユキさんは空いている方の手でコーヒーを一口飲んだ。
「しかしそれは、ねじりドーナツであり、クリームドーナツだよね。つまり何かしら説明を付けないと単独ではドーナツで居られないモノなんだよ。
 アンドーナツなんかは、教えてもらわなけりゃカレーパンとだって間違えられてしまうかも知れない――。というか、そんな事ではなくてね。僕が言いたいのはこのドーナツの凝縮されたアイデンティティである穴は、僕がドーナツを食べ終わった後に一体どこへ行ってしまうのだろうと言う事なんだ」と彼はやや楽しそうにドーナッツを齧った。
 リング状のドーナッツはアルファベットの『C』になる。
「こうして僕が齧ってもドーナツの穴の部分を食べる事は出来ないからね」
「そうね」とわたしは相槌《あいづち》をうつ。
「うん。と言う事は僕たちがドーナツ。つまりこういうリング状になったドーナツを食べるとドーナツの一番ドーナツらしさを遺した穴だけが食べ残されて、開放されてどこかに転がって行くということになるはずなんだよ」
 と、彼はとても満足そうな顔で説明してくれた。
 わたしはこうして熱くものを語るときのタカユキさんをとても好ましいと思っている。
「昔は良かったさ。ドーナツが欧州人だけの食べ物だった昔はね」と言って彼はため息をつく。
「だけど今はどうだろう。ドーナツは欧州からアメリカに渡り、そして今現在に至っては僕たちの朝食にまでなっているんだ。当然南極以外の大陸には余すところ無くドーナツのチェーン店が展開されているのに違いなくて、この世界ではきっと二十四時間中必ずどこかで、開放されたドーナツの穴が自由気ままに転がり出しているに違いない」タカユキさんはいつの間にか半分になった二個目のドーナッツをつまんで、コーヒーカップの中に落とした。
 わたしはタカユキさんはスゴイって思った。いつの間にドーナッツを半分まで齧ったのだろう。