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僕の村は釣り日和3~バスフィッシング

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「き、きたっ!」
 先程のワームの時とは違い、硬い、プラスチックのルアーを動かし続けて釣るのは、いかにもルアー釣りをしているという気分になる。
「おう、さっそくきたな」
 父が満足そうに笑った。
 夕陽に銀色の魚体が跳ねた。魚は潜ったり、跳ねたりを繰り返し、抵抗を続ける。
それでも僕は竿の角度を変えながら、リールを巻き、足元まで魚を寄せることができた。まだ口に指を突っ込む勇気はないが、岸辺に魚をずり上げる。
 30センチに満たないくらいのブラックバスだ。
 ワームの時とは違い、ズングリムックリのルアーには三本の針が付いている。僕が針を外すのに手間取っていると、東海林君が見かねてプライヤーを貸してくれた。
「さっさと外さないと、魚のダメージが大きくなるぜ」
 その言葉はブラックバスを愛する釣り人の、本音以外の何物でもなかった。
 その後も僕は快調にブラックバスを釣り続けた。型は小さいが相当な数を釣ったと思う。それに比べ、父も東海林君も沈黙したままだ。二人ともまだ一匹も釣っていない。
「二人とも、このルアーに変えたら?」
 僕がそう助言しても、二人とも「いや、いいんだ」と言い、ルアーを変えようとはしない。どう見ても、僕の使っているピーナッツ?より、一回りか二回りは大きいルアーだ。
 それでも二人は黙々とルアーを投げ続けている。まるで自分のルアーを信じきっているようだ。
 おそらく、父や東海林君には、たくさん魚を釣ることよりも大事なことがあるようだ。二人を見ていると、そんな気がした。
 だけど、初めてブラックバスを釣る僕にとっては、今はたくさん釣ることが目標だ。 黙々とルアーを投げる二人を横目に、僕はその後も順調に数を伸ばしていった。もう何匹釣ったか覚えていない。

「ちょっと隣で釣り、いいですか?」
 舌足らずな日本語で話しかけてきたのは、金髪の外国人だった。下腹がでっぷりと出たおじさんだ。
「夕飯を釣りにきました」
 そう言って、金髪のおじさんは小魚の形をしたルアーを投げた。おじさんのリールは見たこともない変わったリールだった。
「そのリール、ゼブコのクローズドフェイスリールですね?」
 父が珍しいものでも見るように話しかけた。
「オー、このリール、最高ね。三十年付き合ってるよ。私、プロじゃない。楽しみだから、好きなように釣る。これ、最高のぜいたくね」