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僕の村は釣り日和2~バルサ50

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 今度は高田君が東海林君を睨む。高田君は怒るとすぐ顔が赤くなる。丸刈りにしたとあいまって、その様はまるでタコだ。
「おい、お前。俺のことをピーマンとぬかしたな!」
 しかし東海林君は視線を合わせることなく、つまらなそうに続けた。
「お前は『ブラックバスは悪者だ』って言っているが、それは親の受け売りだろう? 一体お前は一度でもブラックバスを見たり、釣ったりしたことがあるのか?」
「そ、それはないけど……」
 高田君が口ごもる。どうやら形勢は東海林君に分があるように、僕には思えた。
「だったら、俺たちのやることに口を挟むな」
 東海林君の口調は静かだったが、他を圧倒するような迫力があった。その迫力にさすがに高田君も返す言葉がない。
 ガラガラ……。
 教室の扉が開いた。そして、笑顔で斎藤先生が入ってくる。高田君も、他のみんなも一斉に自分の席に着いた。
「みなさん、おはようございます。爽やかな秋晴れの朝ですね。こんな日は心も爽やかにいきたいですね」
 先生の視線は僕と東海林君、そして高田君を交互に見ているような気がする。
 僕は東海林君を見た。何食わぬ顔で前を見つめている。
 僕はこの時、東海林君に感謝すべきだったのだろうが、まだ腹の虫が収まらなかった。自分の父親を公然と侮辱されて怒らないやつがいるだろうか。

 その日も僕は東海林君と早々と下校した。高田君たちと遊ぶ気にはとてもなれなかったのである。
「今朝はありがとう」
 僕の心の中はまだ怒りに震えていたが、東海林君には感謝の言葉を送らなければなるまい。
「いいんだよ。あいつ単細胞だろ? 言葉ではこっちが上だってことをわからせてやったのさ」
 東海林君は照れたように笑いながら振り返った。しかしすぐに寂しそうな顔をすると立ち止まってしまった。
「どうしたんだよ?」
「お前のお父さんの悪口を言われた時、俺のお父さんの悪口を言われたような気がしてさ。あの時、本当はブン殴ってやろうかと思ったんだ」
 東海林君は右手のこぶしを強く握り締め、下を向いたまま呟いた。帽子の影でよくは見えなかったが、少し目は潤んでいたかと思う。
「俺さ、ここに来る前、空手を習っていてさ。先生から絶対にケンカで空手の技を使うなって言われていたんだ。でも今日ケンカしてたら使っちまいそうだった。だから口ゲンカで収めたんだ」
「そうか……」