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山本 かの子(偽名)
山本 かの子(偽名)
novelistID. 34002
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バツイチの娘。~未成年のあたし~

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【バツイチの母】の顔色を伺うスキルを身に付けた、ませたガキ。


【当たり前】だと思っていた母とあたしだけの生活は、
あたしが2歳の頃からはじまっていた。
【当たり前】じゃない家庭環境だと気づいたのは、
幼稚園児だったあたしは
『なんで父の日なのにあたしだけお母さんの絵を描くのだろう』
と幼心に違和感を感じていた。
しかしながら、さほど私生活に差し支えなかった。
園児の中にも【バツイチ】の子がたくさんいたから。
そしてなにより、幼稚園の先生にかわいがってもらっていたから。
その場所自体、苦ではなかった。
明るくて、元気で、いじめている子がいたらすぐさま先生に報告する子。
どこから湧いてくるのか、正義感が異様に強い子だった。

あたしの脳内の記憶では【バツイチの母】は
『社会経験だー!!』とよく口にして【おとな】の社交場へ、
連れて行かされた。
社交場とは【バツイチの母】の会社の吞み会。
その場の【おとな】たちは、あたしに優しかった。
とても優しく感じた。
きっとそう感じたのは、あたしが【こども】だったからであって、
同時に【バツイチの母】の顔に泥を塗らないために...
あたしにとって、社交場はまるで主演子役のように、
自分だけにスポットライトが向けられている空間が好きだった。

だが、毎回【バツイチの母】の社交場に連れて行ってもらえる訳がない。
花金の日のお迎えは祖父だった。
つまりは祖父母の家に預けられることもしばしあった。
夜9時過ぎに祖父母の家の固定電話が鳴る。
『今から迎えに行くから待っててねー』とお酒の入ったテンションの高い
【バツイチの母】からの電話。
『いつ迎えにくるのだろう...』なんて祖父母には云えず、
祖母の隣で眠りにつき、朝を迎えると隣には祖母の姿しかなかった。
『やっぱり...』迎えにこないことなど疑心暗鬼で、
少しどこか迎えに来てくれることを期待していた、無垢なこころに傷がついた。

それでも【バツイチの母】なりに、
【ふつう】の家庭のような生活を与えてくれた。
夏は海水浴。毎年あたしの誕生日は某テーマパーク。冬はスキー。
身だしなみは【バツイチの母】スタイルをあたしにまとわせた。
そもそも【バツイチの母】の生い立ちは、
貧乏とかけ離れていた生活で、苦労知らずのお嬢様。
そのように育ってきた【バツイチの母】に、
こころがどこか寂しい、空虚感で埋め尽くされた本当のあたしの本心が、
わかる訳ない。

それでもあたしと生活のために働く【バツイチの母】に、
迷惑はかけまいと、とりあえず笑っていた幼稚園児のあたし。
『お母さん、あたしが笑って、元気だったら嬉しいよね?』