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山本 かの子(偽名)
山本 かの子(偽名)
novelistID. 34002
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バツイチの娘。~未成年のあたし~

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大学4年生の【君】と大学2年生のあたし。

出会って何年が経ったのだろう。【君】とあたしの間の空白の1年を含めて。
音楽ってズルい。【君】といたすべての記憶を甦らせてくれる。
『この曲はケンカしたときに』『この曲は【君】と仲直りした曲』
『この曲はまるで【君】とあたしの情事のよう』『この曲は【君】からの着信音』
『この曲は【君】の着信音』
今でも街を歩いていている時【君】の面影を探してしまう、あたし。
そんなあたしを
『バカだなー、いつもここにいるよ』と【君】は笑うだろうか。


田舎暮らしをしてあたしを最初に困らせたのは、ヤモリだった。
ヤモリくらいで。と思うかもしれないが、幼い頃の記憶以来その生き物の存在に出会う機会を避けてきた。
夏になるとアパートはヤモリハウスになる。あたしは、虫が大嫌いなの。
最終的には部屋にまで侵入してくるようになった。
人間という形からかけ離れている故に、好きにはなれない。
もう俊敏に動くもの自体がヤモリに見えるくらい、脳内は恐怖でいっぱいだった。
バイトから帰宅後、アパートの前で【君】に
『階段にヤモリがいるから下まで降りてきて』と無茶苦茶な要求をする。

【君】の部屋で生活する日々が始まった。何かの用事で、あたしの部屋に行く時は【君】が親衛隊のように着いてきてもらった。
本当は【君】も虫が苦手なのにね。

小さな大学だったためウワサがすぐ広まる。
『誰が付き合っただの~誰が別れただの~ダレ誰と誰ダレがケンカしただの~』
そういうのにうんざりしていた。
『おはよー聞いてよー××ちゃんがさー』女の愚痴を聞くのがあたしの役割だった。

『どうして仲間なのに愚痴を云うんだろう』
『きっとこの子は、あたしに他の子の愚痴を云うようにあたしの愚痴も云っているだろう』
疑心暗鬼、あたしの得意。
『あーめんどくさいな、云いたいことあれば直接かメールでもいいじゃん』
昼食の食堂であたしのいる前でコソコソ喋る女たち。
『あたしのことでしょ?幼稚。もうひとりでいいや』
早めに切り上げて、女たちに
『次、授業あるから行くわ』そう伝えた時のあたしは、すでに女たちに呆れていた。


『関わりたくない。面倒くさい。喋りたくもない。ひとりでいいや』
あたしは、一度他人を嫌ってしまうとその人にたとえ長所があっても、
赦せない頑なな人間である。
-----------------------------------
TO ××ちゃん
件名 なし
本文
あのさ、もう一緒にいるのやめるわ。
そうやってコソコソされるの嫌だし。
ごめん。今まで付き合ってくれてありがとう。


---送信しました---

授業が始まる前にメールを送った。
すぐさま、携帯電話のバイブレーションがメールがきたことを知らせた。
------------------------------------
××ちゃん
件名 なし
本文
わかったよ。


というより、あまりメールの内容を覚えていない。怒りを通り越して呆れていたから。
『うっぜー』---連絡先を消去しました---
あたしは嫌だと思ったらすぐ連絡先を消す。

【君】に知らせた。この一件を。
『いいじゃん。そこまでの関係だったってことだよ』
なだめてくれた。

すべての講義が終わり、バイトに行こうと思った時携帯電話が鳴る。
---------------------------------------
abcd@××.ne.jp
件名 なし
本文
さっきはわかったょなんてぃったけど
かの子ともぅ一度話し会いたぃ。
やっぱり友だちがいぃ。
今日、バィト?

-----------------------------------------
TO abcd@××.ne.jp
件名なし
本文
ごめんバイトなんだ。

---送信しました---

それから何度か、その子から話し会いたいというメールがきたが、
あたしはなとなくごまかして、疎遠になるように仕向けた。
『嫌ってくれて結構。無視してくれてありがとう』

アルバイト中、Aに
『ねー、なんで女って~』
と一連の流れを話すと
『まあそんなもんでしょ。でもいつもそうだよね、すぐ人を切るじゃん』
ご名答。

こんな強気な言動をしたが、大講義室でひとりポツんと受ける授業は、はじめは苦痛で仕方なかった。悔しかった。皆の笑い声が胸を苦しめた。
けれどあたしが選んだ道。間違いはない。どこからそのプラス思考が出てくるのか、根拠は依然わからないまま。

そんなひとりぼっちのあたしを見兼ねた、女子グループが
『こっちで一緒に授業受けなよ』と声をかけてくれた。
来るもの拒まず、去る者追わずのあたしは
『どうも、はじめまして新メンバーの~』とおどけて見せた。
結果、そのグループでもうまくいかなかったことはいうまでもない。
それは大学3年の時の話し。もう少し先の話し。

【君】といえば、就職活動に追われていた。
明日は□時から△で面接で、○日も面接...【君】の口からは『面接』という言葉しか聴こえなかった。あたしが【君】の大事な時間を邪魔していたの。
『遊んでよ』
『明日までにエントリーシート仕上げなきゃだめなんだよ』
『なんでかまってくれないの?』
『大事なんだよ!!』
『明日から××ホテルの面接で準備しなくちゃ!!』
『もういい!!』
久しぶりに自分の部屋に戻った。

『おかしいな。いつもなら追いかけてくるのに』
【君】からのメール着信音が聴こえた。
-----------------------------------
【君】
件名 なし
本文
当分、距離を置こう。
-----------------------------------

何回も別れ話はあったけれど【君】から『距離を置こう』なんて初めて聴いた。
『あたし、本当にひとりぼっちだ』
あたしはあたしのことしか考えていない。【君】がではなく、あたしが淋しくなることを恐れていた。


朝目覚めて携帯電話を見ても【君】からのメールはなかった。
【君】がいないだけで、これほどまでにすべての景色が違ってみえるなんて初めての感覚。
こんな時だからこそ、講義中はひたすらルーズリーフを文字で埋め尽くして気を紛らわせて忙しくしても脳内は【君】のことでいっぱい。
大講義室でひっそり涙を流した。
『元気ないねー』なんて声をかけられたところで『ちょっとケンカしちゃって』と云えば女なんて大抵、他人事のように『大丈夫だって~』とあたりまえの言葉しか返ってこないことをわかっていたからあたしはいつものあたしでいた。

面接は一泊二日だった。
『今日は【君】が帰ってくる日だ』『どんな顔をすればいいんだろう。』
【君】の部屋に手紙を置いといた。
『【君】へ...この手紙を読んでいるってことは無事に帰ってきているんだね。ごめんね........中略............今までありがとう。』

講義中【君】のことで頭がいっぱいだった。
講義が終わると【君】着信のメールが鳴った。
君『帰っておいでよ』
あたし『なんで?別れるっていったじゃん』
君『とりあえず、帰っておいでよ』