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カナカナリンリンリン 第二部(完結)

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喫茶店で向かい合って、楽しい話しをしているわけでもないのに妻の目はきらきらと輝いて見えた。私は漠然とこの女性と結婚するのではないかと思った。

やはり膝が笑っている感じがする。休ませながら進む。ズボンの足もとが濡れて気持ちが悪い。

――ずうっと一人暮らしがしたいと思っていたんだ。でも、同棲もいいかなあ――

私はとにかく真っ直ぐに低い方に向かった。時間的にもどこかで道にぶつかる筈だと思ったが、まだ道は見つからない。蛇行しながら登ってきた記憶が間違いなら、全く別のところに向かっているかも知れない。またしびれるように冷や汗が出た気がした。せめて水音が聞こえればと耳をすましても、カナカナリンリンリンと雷の音ばかりだ。せめてもの救いは、近くで聞こえていた雷の音がちょっと前よりもやや遠くに聞こえている。

妻は次々と言葉を頭に送り込んでくる。

――出てきちゃった。父がね、まだ若いし、大学も出ていないやつのところにはやれないって言うんだ。あとで荷物取りにゆかなきゃ――

汗をかいているのに寒いような不快な感触がする。くじけそうになる気持ちをからかうように聞こえてくるカナカナリンリンリンの音。クソッと言いながら灌木につかまりながら斜面を滑り降りる。腕も滑る身体を支えてきたので疲れて来た。

――あ、それっ、いい詩でしょう。違うよ、私が書いたんじゃないよー。書き写しただけ――