カナカナリンリンリン 第二部(完結)
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正月早々入院した場所は神奈川県郊外の小さな山あいにあった。東京の郊外から神奈川郊外へ、電車とバスを乗り継ぎ、日曜ごとに4時間もかけて見舞いに行った。まあ、面会時間は午後からだったので、朝家を出て横浜あたりをぶらぶらして、バスに乗る前にゆっくり昼食というのんびりは出来た。
妻の夕食に時間に合わせて、一緒に食べるように近くのコンビニに弁当を買いに行くのが恒例となった。郊外のことで、コンビニまで十五分ぐらい歩く。最初はもの珍しさにあたりを見ながらハイキング気分だったが、次第に飽きてくる。最初は街路灯だけの暗い中を歩いたのだが、そのうちに薄暮、同じ時間なのにだんだんと明るい中を歩くようになった。弁当と缶ビールの入ったビニール袋を下げて、私は山に沈む夕日を見ながら病院に向かって歩いた。誰かが唄っていた歌を思い出しながら。
夕日が沈むのを 見るのはいやだ
だって 人生が終わったような 気になるから
無理に明るく話をしながら、妻のベッドの脇で弁当を食べた。缶ビールも飲めたし、一緒に食事も出来た。これはこれで幸せなのかも知れない、少しだけ酔った頭でおいしそうに夕食を食べる妻を見る。
作品名:カナカナリンリンリン 第二部(完結) 作家名:伊達梁川