魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP-
「ああ、いいな」
相変わらず部屋を見回しながらこちらを見ようともしない……。
オレはまず奥から出してきたワインとコルク抜きを田島に渡し、キッチンへ入った。
「これで良いか?」大型の冷蔵庫から肉を二枚出し田島に見せた。
「ああ」田島は螺旋をコルクにねじ込みつつ、こちらを見ないで返事をした。
フライパンを火に掛けてから、皿に二人前の付けあわせを載せ、電子レンジにぶち込んだ。この辺の動作は手馴れたものなのだ。
焼き上がった肉にナイフを入れながら、聞いてみた。
「どうだい、ボクの自慢のステーキは? これでも市場じゃ中々評判が良いんだ」
ウェルダンの焼き加減も、オレにとっては丁度良い。
田島のはお好みでベリーレアに焼いてやった。
「コイツは極上だ、言うだけの事はあるよ。ただ、あまり見かけんカタチだが。ロースでもヒレでもないな?」田島はあまり噛みもせず、赤ワインで流し込む。
オレは答えず、食べ続けた。田島も別に気にする風でも無い……。
全部食べ終わってワインを飲み干すのを確認してからオレは尋ねてみた。
「どうだ?」
「ん?」田島は満足そうにふんぞり返ってオレを見る。
「どうだ?」もう一度聞いた。
「旨かったよ。さあ、それより早く見せろよ。魔法のランプってヤツをよぉ」田島のヤツは昔から進歩のない強面でオレを脅すつもりの様だ。
オレはニヤリと笑い、部屋の隅からいつも使っているボードを引っ張り出した。
そのボードには絵が描いてある。肉屋によくある食肉の部位説明の絵だ。
「ランプはとっくに出してあるよ。というか、食っただろ? ほら」
オレはその、色分けされたウシの絵の、尻の部分を指さした。
作品名:魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP- 作家名:郷田三郎(G3)