魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP-
「ランプはランプでも魔法のランプ肉なんだよ」
オレはつまらない駄洒落でも言ったときの様に力なく哂った。
すると田島は馬鹿にされたとでも思ったのか、青白い顔を醜く歪めてオレを睨んだ。
「なんらとぉ? ふらけるらぁ!」
ワインは大して飲まなかったが、すでに呂律が回らなくなっている様だ。
右手を振り上げて殴りかかるポーズになったが、力が入らないらしくそこで止まってしまった。
そして振り上げた自分のこぶしを見て、歪んだ顔が今度は間の抜けた顔になった。
「???」
そこにあったのは人間の"こぶし"ではなく偶蹄目の"ひづめ"だったのだ。
田島は目を回したのか、ワイングラスにたっぷりと塗った睡眠薬が効いたのかは判らないが、そのままバタンと倒れてしまった。
オレは完全に寝ってしまったのを確かめてから、田島を担ぎ上げ、家から運び出した。昔はひ弱だったオレだが、この仕事をするようになってからは自分でも驚くほど体力がついたのだ。
「ほら、仲間を連れてきたぞ」
オレは牛舎の皆に声を掛けてから、田島を空いている柵の中に放り込んだ。
早く運ばないと体重はどんどん増えて、オレ一人では運べなくなるのだ。
こうしている間にも田島の牛への変身はどんどん進行している――。
もう知ってる人間が見てもコレが田島だとは判らないだろう。もっとも、変態途中のコレの悍《おぞま》しさは人間の知っているどんな生き物にも似ていないが……。
作品名:魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP- 作家名:郷田三郎(G3)