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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP-

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 乗って来るのは解っていた。
 黙っていれば田島の方から誘ってきたかもしれない。どちらにしても金を出すのはオレなのだろう……。
 田島ときたら学生服を着ていた頃から酒臭い息を吐いていた事がしばしば有ったのだ。

 オレ達は駅の近くにあるチェーンの居酒屋に入った。
「お前、今は何やってるんだ?」田島は酒を飲むと立派な体格に似合わず少し青白い顔になった。
「あ、うん、牧場をね。千葉の方で牛を飼ってるんだ」オレは焼き魚をつつきながら上目遣いに答えた。

「牛? 牛みたいにノロマなお前がかよ?」田島は壁に背を凭れて顔だけをこちらに向けている。酒は中ジョッキのビールを二杯空けた後、生の冷酒に代えていた。
「――で、牛ってのは儲かるのかよ?」クチャクチャと串焼きの肉を咀嚼する音が耳障りだった。
「まあ、そこそこにだね。それより顔色が悪いよ。どこか具合でも?」オレはいつもの様に精一杯心配そうな表情を作った。気になる事は先に聞いておいた方が良い。

「あぁ? 顔色だって? 飲んで青くなるのは昔から変わっちゃいねぇよ。と言ってもダチじゃねぇお前は知らねぇだろうがな。
 あ、お前、酒代が惜しくなったか? でも大丈夫。定期健診でも一度も引っかかった事は無いぜ」
「そうなんだ……」
 田島のヤツ、仕事はともかく健康だけは自信があるらしい。オレも少し安心した。

 その後、田島は学生時代の自慢話(といってもいわゆる武勇伝というやつだ)を長々とし、オレを閉口させた。
 何故って、あの頃のオレには楽しい思い出なんて無いに等しいのだ。