魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP-
久しぶりに新橋に出た。
駅前のビルは相変わらずの佇まいで、会社勤めをしていた頃を思い出させてくれる。
想い出と言っても、飲みすぎて噴水池の縁に座り、夜風に当たっていた。そんな程度でしかないが――。
特にあてが有る訳ではない。
冷えた缶コーヒーを片手にしたオレは、噴水を背に座り、見るとは無しに動きもしないSLを見ていた。
夕方といってもまだ明るく週末の駅前広場は上着を手にした勤め帰りのヒトで溢れている。
と、雑踏の中に懐かしい顔を見つけた。
学生の頃以来なので十年以上会っていない事になるが、不思議な事に田島の顔は雑踏の中で特別なオーラを発していたかのように見えた。
但し、この場合の特別というのは黒いもやの様な陰気なオーラだ。どうやら噂で聞いた会社勤めが上手く行っていないというのは本当の事の様だ。
もっとも、どう考えてもサラリーマンが務まるような人間とは思えなかった。オレに輪を掛けた以上に――。
オレは立ち上がって田島に歩み寄った。
「やあ、田島クンじゃないか?」振り向いた田島はすぐにはオレを思い出せない様だった。
「大家だよオーヤ。ほら学校で一緒だった――」
ようやく思い出した田島はまじまじとオレの顔を見て、ふふんと笑った。
どうやらオレの顔は冴えないサラリーマンの自尊心を上向きにさせる効果が在ったらしい。
「十二年ぶりかな。懐かしいなぁ。どう、そこらで一杯やらないか? 勿論誘ったんだからボクが奢るケド」
駅前のビルは相変わらずの佇まいで、会社勤めをしていた頃を思い出させてくれる。
想い出と言っても、飲みすぎて噴水池の縁に座り、夜風に当たっていた。そんな程度でしかないが――。
特にあてが有る訳ではない。
冷えた缶コーヒーを片手にしたオレは、噴水を背に座り、見るとは無しに動きもしないSLを見ていた。
夕方といってもまだ明るく週末の駅前広場は上着を手にした勤め帰りのヒトで溢れている。
と、雑踏の中に懐かしい顔を見つけた。
学生の頃以来なので十年以上会っていない事になるが、不思議な事に田島の顔は雑踏の中で特別なオーラを発していたかのように見えた。
但し、この場合の特別というのは黒いもやの様な陰気なオーラだ。どうやら噂で聞いた会社勤めが上手く行っていないというのは本当の事の様だ。
もっとも、どう考えてもサラリーマンが務まるような人間とは思えなかった。オレに輪を掛けた以上に――。
オレは立ち上がって田島に歩み寄った。
「やあ、田島クンじゃないか?」振り向いた田島はすぐにはオレを思い出せない様だった。
「大家だよオーヤ。ほら学校で一緒だった――」
ようやく思い出した田島はまじまじとオレの顔を見て、ふふんと笑った。
どうやらオレの顔は冴えないサラリーマンの自尊心を上向きにさせる効果が在ったらしい。
「十二年ぶりかな。懐かしいなぁ。どう、そこらで一杯やらないか? 勿論誘ったんだからボクが奢るケド」
作品名:魔法のランプ -THE MAGICAL RUMP- 作家名:郷田三郎(G3)