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ユキヤナギ

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公園に入って、すぐ目に付いた園内マップを見ながら、広い園内の中央にある原っぱに向かった。池の近くで「あっクリスマスローズ」と由紀が言うと「えっ、なんで今頃クリスマス」とS君は不思議そうに言う。由紀も名前の謂われを知らなかったので、聞き流して歩いた。

最近の各々の生活ぶりなどを話しながら歩いた。歩きながら花を目にすると、花の名をあまり知らないというS君に由紀は「れんぎょう」「サンシュユ」とか教えた。復唱するS君のたよりなさに笑ってしまった。級長をやっていた人とは思えない。

「あれ、なんだっけな人の名前のようなあ、マンサク」「え、万作?、与作はないの」「ははは、与作ねえ」と由紀はだんだんと楽しくなって、雰囲気によっては打ち明けてしまおうかと思った結婚を勧められている話もできなかった。

由紀は得意になって、「沈丁花、馬酔木、ムスカリ、水仙」と名前をいいながら歩いた。
「あ、水仙は知ってるよ」と少し得意そうにS君が言った。

少しずつ、男の二十歳が発展途上でまだ子供に近いのではと思えた。由紀は子供が好きで沢山産みたかった。そんな可能性を仮にS君にあてはめてみたが、上手く像が結ばない。少しときめきながら、同時に少し醒めながら由紀は歩いた。

作品名:ユキヤナギ 作家名:伊達梁川