ユキヤナギ
案内板を見ながら、どこに行こうかと相談していて何やら小山のようなものがあるのに気付いた。二人顔を見合わせ行ってみようということになった。二人で土手を登って、その光景を見た私は「わあーっ、すごい!あれ何?」と聞いた。「多分、雪ヤナギだよ、すごいねえ」と由紀が嬉しそうに言った。
古墳のように丸く盛り上がった小山全体、雪が積もっているように見えた。しばらくぼーっと見とれてから、「あそこに行ってみよう」と私は、土手を降り始めた。由紀も続いておりてくる。
近づいてみると、遠くからはよく見えなかった小さな緑色の葉が見えた。近くで見ると白い花とその緑色の調和が美しかった。
「いい匂い」と由紀が花に鼻を近づけて言った。私も鼻を近づけたが、かすかに匂う程度だった。やたらと匂いを出さない、そして白い小さな花を私は好きになった。
けもの道のような細い道が上まで続いていて、左右からアーチのように雪ヤナギの枝が垂れている。いっぱい白い花をつけた枝が、雪を乗せた竹藪のようにも見える。それはまた、教会で挙げる結婚式の招待者が左右にいて、祝福してくれているようでもあり、私は由紀の腕と自分の腕を組んで「結婚式ー」と言って歩き出した。
由紀は、びっくりしたように私を見て、数歩一緒に歩いたが、腕をふりほどくと、雪柳のアーチをくぐって先に行ってしまった。私は、恥ずかしかったのだろうかと思いながら、しゃがみ込んだり、枝をよけながら上に向かって歩き出した。
由紀は何事もなかったように、やはり遠くを見ていて、その横顔に私には解らない何かがあるのだろうと、少し醒めた気分になった。そして、男ばかりの兄弟の中で育った自分には女性の心理がよく解らないということもあらためて確認した。