愛の深度計
榊原の表情が暗い。
しかし、高見沢にとって、こんな事はどこまでも他人事。
「そう言えば、若い頃に、骨まで愛してという歌があったけど、骨までしゃぶりたいほど愛してますって … これ行けるぜ?」
「いやいや、そんなの、ウチのカミさん、焼き鳥屋行っても手羽先食べませんしね、骨まで愛してるって、そんな気色悪い事、理解しませんよ」と、榊原がムキになっている。
「ならば、ここは単純に、関西弁で … メッチャ好きやねん、これ、わかり易いぞ」
だが直ぐに、「それで、どれくらい愛してるのですか?」と榊原が返して来る。
「そりゃあ … メッチャだよ」
高見沢はこう言い放って、後はこれで決まりという顔で澄ましている。
しかし、榊原はまだ胸にストンと落ちるところまでは来ていない。
「高見沢さんの亀の甲より年の功で、だいぶん近付いては来てると思いますが、
まだちょっとね … ダサイっすよね」
「あのなあ、榊原、これは俺の問題じゃないんだぜ、ユア・プロブレムだよ、オマエも真剣に考えてみろよ」と、高見沢は文句をつけた。
「はい、仰る通りなんですけど、いい案がないんですよね」
榊原が困り果てている。
一方高見沢はもう邪魔くさくなって来た。
「そしたら、ハ−トマ−クを5つ並べて返信しておけよ」
最後にこう薦めた。
すると榊原が「それ、何なんですか?」と食い付いて来る。