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愛の深度計

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しかし、榊原が気合いを入れ直して、「ところで、愛の深度計て、具体的にどんな測定器なんですか?」と質問して来る。

高見沢は業務中には見られない神妙な面持ちとなり、啖呵を切る。
「人にとって愛するということは本能的に好ましいし、心地よいことと違うか? 

要は、愛は快感なんだよ」

「高見沢さん、突然スゴイことを言いますよね、愛は快感なんて、名文句ですよ」
榊原はと驚いている。
しかし高見沢はまだまだという顔で、言葉が熱っぽい。

「大脳の中に、人間にしか持ち合わせていない新新皮質というのがあるのだよ、
その新新皮質は、好き嫌いを決める扁桃核と記憶の海馬、そして脳幹や視床下部も含め、密接に繋がったネットワ−クを作っている、

つまりA10と言う神経で結ばれてて、盛んに情報交換されているのだよ」

高見沢のこんな演説に、榊原は「えらく話しが難しくなって来たなあ」と半分ウンザリ。
しかし、いつも世話になっている上司だから、聞かざるを得ない。
一方高見沢は益々調子が乗って来る。

「榊原、よく聞けよ、簡単に言えばだぜ、
人を愛せば、新新皮質のまわりに幾重にもA10神経の情報網が張り巡らされ行く」

「へえ、そうなんですか」
榊原が半分わかり、あと半分わからないような顔をして聞いていると、高見沢はさらに力を入れて来る。


作品名:愛の深度計 作家名:鮎風 遊