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新月の夜に

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目覚まし時計が女を起こした。
いつもなら、鳴る前に目が覚めることが多く、アラームの音はほとんど聞いていない。
ピピッピピッピピッ
三度目で手を伸ばし、アラームを止めた。
急いで起きる必要などない。
女は、布団の中でまだ夢の続きを見ているようにとろんと体を横たえていた。
暫くして、リビングへ行く夫の足音がした。
(そろそろ起きなくちゃ)
女は、布団から起き上がると、着替えた。
暦のうえでは春が訪れたとはいえ、今朝は冷え込んだ。
冷えた部屋で冷たい衣服に手を通すのは、歯が踊る。
「おはよう。コーヒー入れようか。」
「いや、お茶がいい。昨日の酒が・・いや食べ過ぎた。」
「あら、ありがと。美味しかったってことね。はいお茶。」
いつもなら、苦情(いいわけ)に対してイラついた態度も今朝は不思議と出なかった。
その後、ふたりで近所に買い物に出かけたり、昼過ぎ、夫は仮眠を取ったりと時は穏やかに過ぎて行った。

作品名:新月の夜に 作家名:甜茶