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てっしゅう
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「神のいたずら」 最終章 神のいたずら

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由紀恵は混乱した。今言ったことが本当なら、碧の記憶はあのトンネル事故の直前までが戻ったことになる。その後の三年間は記憶が無いとすると、何故隼人の存在を知っているのだろうか。秀之が帰ってきた。碧が話しているのを聞いて、同じように信じられない様子だった。
「パパ!お帰りなさい・・・碧ね、ずっと寝ていたんでしょ?ママから聞いた」その声を聞いて、男泣きに泣き始めた。

「パパまで泣いて、どうしたの?碧に解るように話して」

三人は碧のベッドを囲んで話始めた。

「碧、大切なお話があるの」
翌朝、碧のベッドに近寄って由紀恵はそう切り出した。
「何?ママ」
「あなたは気付いてないかも知れないけど、お腹の中に赤ちゃんがいるの」
「・・・隼人さんの子供ね」
「そう。自分でそうだと解るのね?」
「うん、大好きだから・・・昨日断らなかった」
「昨日?そうね、2ヶ月も眠っていたからね。後悔してない?」
「うん、碧が誘ったから」
「ママはあなたが無理やり隼人くんにされたんじゃないのかと疑っていた。違うのね、良かった」
「そんな人じゃないよ隼人さんは・・・碧にも優しいし、妹の麻美ちゃんにも優しいし、お母さんにも優しい人だよ」
「じゃあ、妹さんの誕生日に隼人さんの家に行ったことは覚えているのね?」
「うん、覚えているよ。でも、昨日じゃなかったのよね?何故か隼人さんとどうして知り合ったのかは思い出せないの。ママは知ってるの?」
「知らないほうがいいわよ。ママね、隼人さんの家に行ってこれから碧のこと話してくるから、待っててね」
「ほんと?じゃあもう直ぐ隼人さんに逢えるのね?」
「ええ、ここに連れてきてあげるから待ってなさいね」
「ありがとうママ!碧身勝手に妊娠なんかして許して。一度だけで子供が出来るなんて思わなかったの。学校もあるし、12歳で育てられないから、お医者さんで中絶しないといけないね」
「碧、今は14歳なのよ。あなたは子供をなくしてもいいの?傷つかないのね?」
「そうか14歳だったね。でもそう言われると・・・隼人さんと相談して決める。だったらいいでしょ?」
「そうね、みんなで話し合いましょう。とっても大切なことだからね。ママも着いているし弥生だっているから、碧が頑張って生めば、育てられるわよ。そのことも考えておいてね」

あれだけ生むことには反対していた由紀恵だったが、母として女として碧に中絶を進める気にはなれなくなっていた。元気になった娘を見て、この年で身体も心も傷つけさせることは可哀想だと強く感じたからでもあった。

由紀恵は高林の家に行き、碧が回復した事を伝えた。そして隼人に逢いたがっている事も付け加えた。ただし、記憶が失われて、今は12歳の精神状態であるから、そのつもりで話すようにと念を入れた。由紀恵は一緒に来て碧に逢って欲しいと隼人に頼んだ。麻美も着いてゆくとねだって三人になって自宅へ戻ってきた。

隼人は碧の家に初めて上がった。麻美は碧を見つけると走ってベッドの傍に行った。
「お姉ちゃん!元気になったのね!麻美ずっと心配してたの。もう大丈夫なの?」
「麻美ちゃん・・・碧は普通になるにはまだ少しかかるけど、心配要らないよ。隼人お兄ちゃんと仲良くしてた?」
「うん。仲良くしてたよ。お兄ちゃんも心配してたよ。声かけてあげて」
「ありがとう・・・隼人さん、心配かけてゴメンね。碧ね・・・子供が出来たの、隼人さんの赤ちゃん産みたい・・・ねえ、構わないでしょ?」
「碧・・・俺は、無責任なことをした。碧のこと本当に考えて愛さなかった。すまない・・・でも、ご両親に賛成して頂けたら責任持って育てて行きたい。碧を絶対に幸せにすると誓ったからな。覚えているだろう?」
「うん、覚えているよ。解らないことがたくさんあるけど、今は身体を大切にして子供が丈夫に育つことを願うの。隼人さんも祈ってね」
「祈るとも・・・俺の子供だからな」

「お姉ちゃん!赤ちゃんが出来たの?生まれてきたら麻美にも抱っこさせてくれる?」
「麻美ちゃんに赤ちゃんが抱っこ出来るかしら?碧だって出来ないかも知れないのに」
「大丈夫だよ、お母さんになるんだもん・・・」

お母さん・・・か。碧は少し膨らんでいるお腹を見て、自分が母親になると言う自覚が出始めてきた。14歳の身体で母親になるということがどういうことなのか解っている訳ではない。もう少し経ってお腹の中の子供が動いたりすれば喜びも増して来るだろう。しかし、出産は碧の身体にとって予想以上の負担になることは確かだ。

由紀恵にはすべてを許せるところまでは納得できなかったが、今は静かにそのときを待つ覚悟になっていた。
生まれた子供は自分が手助けをして育てる・・・そのことは譲れない部分だったから、隼人にも、母親の美樹にも強く求めた。

隼人は考えていた。今のままでは碧の子供を育てられないだけでなく、親の世話にならないといけなくなってしまう。コンビニのバイトを辞めてしっかりとした職場で働こうと職探しを始めた。

碧が意識を取り戻したことは医師も驚いた。簡単な検査をして、特に注意もしなくて良いとお墨付きをもらい今までどおりの生活を始めた。しかし、大きなお腹をして学校へは行けなかったので、長期の休校を余儀なくされた。自宅での学習に切り替えて何とか卒業できるように便宜を図ってもらえた。

隼人は嫌ではあったが、父親の会社に就職した。高校中退ではどこも正社員での採用はしてくれなかった。碧のために憎んでいた父に頭を下げた。気持が大きく成長している隼人を見て父親は喜んで採用した。美樹もそのことは仕方ないと考えて、隼人の就職を祝ってくれた。

早速碧に報告した。
「俺さ・・・親父の会社に就職したよ。嫌だったけど・・・お前のために我慢さ。気にしなくていいよ。仕事は楽しいから」
「うん、ありがとう・・・安心して子供生めるわ。碧ね、まだ子供だけど、頑張って母親の勉強するから大丈夫よ」
「そうか、早く一緒になりたい・・・学校どうするんだ?」
「ママは子供の世話してあげるから高校に通うようにって言うけど、碧は生まれた子供と一緒に居たいの。隼人さんはどう思う?」
「お前がしたいようにすればいいよ。俺だって子育て手伝うし」
「碧は、やっぱり・・・学校へは行かない。あなたと二人で子供を育ててゆきたい。ママにもそう言うから」
「ああ、そうしよう。正式には16歳にならないと結婚できないけど、それまではここにボクが通うから我慢してくれ」
「うん、大丈夫だよ・・・毎日来てね」
「もちろんだよ。碧が俺のこと忘れてくれてなくて良かった」
「なんで忘れるのよ。大好きなのに・・・どうしてそう思ったの?」
「12歳の記憶しかないって聞いたから」
「ママが言ったのね。でも隼人さんとどうして知り合ったのか思い出せないの。中学生になってからの記憶は無いの。隼人さんとのあの日のことだけはしっかりと覚えているのに・・・」
「そうなんだ・・・不思議だけど、碧と俺はずっと一緒だから・・・」
「碧も同じ。子供が生まれたら、ママになるのよね碧は・・・そして隼人さんのお嫁さんになる。そうよね?」
「ああ、そうだよ」