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てっしゅう
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「神のいたずら」 最終章 神のいたずら

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「うん、こうなってからもう一月以上になるでしょ?生理が来ないのはおかしくないかって思ったの」
「この年だからまだ不安定なのよ。それに、こんなことになって変調をきたしているんじゃないの」
「それならいいんだけど・・・」
「それならってどういう事?」
「隼人くんの家に泊まったでしょ?もし二人が、その・・・愛し合っていたら、妊娠しているって言うことも考えられるって思わない?」
「弥生!あなたそんなこと思っているの?ママを心配させないでよ!」
「そんなつもりはないけど、念のために調べてみたらどう?」
「あなたがそう言うなら・・・お医者さんに相談してみる」

病院から担当の医師と産婦人科の医師が尋ねてきて検査をした。
「ご心配の通り妊娠しているようです」
由紀恵はショックのあまり、立っていられなくなった。弥生に支えられながら、「なんということ・・・」そう言って床にへたり込んだ。

碧の妊娠が解って家族の意見が分かれた。弥生はこの先碧が死んだとしても子供はなんとか助けて形見として育ててやりたいと言った。由紀恵は、今なら中絶が可能だからそうすべきだと言った。最大の理由は、父親が隼人だと言う事にあった。親権が向こうに渡って自分達が育てられなくなった場合のショックを考えたのだ。秀之は双方の意見はどちらももっともだと感じて、しばらく考えようと提案した。そして、結論が出るまで誰にも話さないということも付け加えた。

夏休みが終わって碧があまりにも長く休んでいることにクラスメートや碧を知る生徒達からいろんな憶測が飛んでいた。学校側としてもこれ以上黙っている訳にも行かず、全校朝礼の時に校長が生徒全員に向かって発表した。
「三年一組の小野碧さんは、原因不明の病で自宅休養されています。学校に出てこれるまで皆さんは元気になるようにお祈りしてあげて下さい。また、お家の方からお見舞いには及びませんと連絡を受けていますので、それぞれに勝手に行かないようにして下さい」
生徒の一人が手を上げて質問した。

「先生!それじゃなんだか解らないじゃないですか?生徒会で代表してお見舞いに行かせてください。僕たちにとっても忘れられない仲間なんですから」

意見を言ったのは一年のときの同級生達也だった。ざわざわして朝礼が中断したが、校長は提案を聞き入れ、生徒会の代表者男女各一名ずつと碧と親しい優が付き添いで行くことになった。学校側から申し入れされて由紀恵は断ることが出来なかったので、次の日曜日に来て下さい、と返事した。

優は男子生徒代表達也と女子生徒代表詩緒里の二人を連れて訪問した。
碧の姿を見て達也も詩緒里も絶句した。眠っているようにしか見えないその身体からは、声はもちろん、触れても反応すら見せなかったからである。

「何が起こったんですか?何故原因が解らないのですか?おば様?」詩緒里が尋ねた。
「詩緒里ちゃん、病院で検査しても異常がないのよ。本当に何がどうなっているのか、これからどうなってゆくのかすら私たちにも解らないの。残念だけど・・・」

碧の身体を撫でながら、詩緒里は泣いていた。達也も泣いていた。信じられない光景に自分達もどうしていいのか、何を話していいのか解らなくなっていた。

碧の自宅療養は二ヶ月目に入っていた。中絶をするにはそろそろ限界に近くなっていた。由紀恵は大学病院へ出向き担当医師と相談した。
「お母さん、私は医師として中絶は勧められません。身体への影響も考えると未知数な部分があります。出産をして尚且つ今の状態が続くようであれば、それも運命と思われて受け入れるしかないでしょう。もし中絶を強行して命が危機に瀕したら、そのほうが悔やまれませんか?」
「先生、それは主人にも言われました。ずっと考えて考えて、解らなくなって今日はご相談に来ました」
「お母さんにとって何が一番危惧されている部分なのですか?」
「はい・・・父親が未成年だということ。過去に碧へ暴力を振るった生徒であるということ。碧に万が一の場合があったときに親権が父親側に移って、私たちが育てられなくなると言うこと・・・です」
「なるほど・・・ご本人の意思がないから、裁判で決められると、確かに不利ですね。しかし婚姻届も出ていませんし、相手も18歳未満なら、心情的にはお母さんのお孫さんとして育ててゆけるようになるとは考えますが、父親の年齢が出産日以降に18歳を超えていると、難しくなりますね」

由紀恵は計算した。予定日は三月だから、このまま正常に育ってゆけば、言われたように18歳に隼人はなっているだろう。もう由紀恵の中では、子供を堕胎するしかないと決め始めていた。

バッグの中で携帯が鳴った。病院に入ったときに切り忘れたので、慌てて取り出してマナーモードに切り替えた。弥生からの電話だった。担当医に家族の了承を得て中絶のお願いに来ると話して病院を出た。

「弥生?ゴメンね、先生とお話中だったから出れなかったの。何?用件って」
「ママ!碧が・・・碧が・・・動いた!」
「えっ?なんていったの?」
「碧が動いたの!先生に伝えて!ママ、本当なの・・・」

由紀恵は信じられなかった。直ぐに医師に伝えて大急ぎで自宅に戻ってきた。

「パパに直ぐ電話して、帰ってくるように伝えて、弥生」自宅に向かう途中でそう付け加えた。扉を開けて碧のベッドに駆け寄るとそこには信じられない光景が待っていた。

「ママ?碧はここでずっと寝ていたの?」由紀恵に向かってそう話すではないか・・・
「碧!碧なのね!気が付いたのね!碧・・・」後は言葉にならない。身体を強く抱きしめて、泣き崩れた。

「どうして泣いているの?お姉ちゃんもどうして泣いているの?」
「あんた覚えてないの?何があったのか・・・」
「お姉ちゃん、事故があったんでしょ、ママと一緒におじいちゃんの家から帰る途中で・・・碧はずっと寝ていたの?今何日なの?」
「事故?・・・トンネル事故のこと、言ってるの?」
「そうだよ。ママと一緒にトンネルの中を走って逃げたことまでは覚えてるよ。どれぐらい碧は眠っていたの?」

記憶が戻ったと由紀恵は思った。弥生は三年の月日が流れたと返事した。

「三年?・・・そんなに長く寝ていたの?それで碧の身体は大人になっていたのね・・・」
「碧は三年間寝ていた訳じゃなかったのよ。今の記憶が取り戻せない状態で過ごしてきたの。中学三年生になったし、身体も大きくなっているでしょ?ゆっくりと話してあげるから驚かないで元気になるまで身体休めて」
「うん、ママ?隼人さんはどこにいるの?」
「えっ?隼人さん・・・何故知ってるの?」
「だって、碧の好きな人なんだもん。碧が元気になったら呼んでいいでしょ?」
「碧・・・あなたどこまでの記憶が戻ってきたの?優先生や達也君、詩緒里ちゃんのことも覚えているの?」
「優先生?達也くん?詩緒里ちゃん?・・・だれ、わかんない。碧の友達は葵ちゃんだよ。戻ったら一緒に買い物行くって大阪で話したでしょ?」