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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「神のいたずら」 最終章 神のいたずら

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「麻美ちゃん、そうね、早くそうなれるといいわね。頑張ってお勉強もして、お母さん手助けして待っててね」
「うん、約束だよ・・・お兄ちゃんと結婚するって」
「約束ね・・・碧が病気や怪我をしなければそうなるから」
「病気?怪我?・・・治せばいいじゃんそんなこと」
「たとえの話よ。何事もなければという意味で言っただけ」
「なんだ、そうなの。心配した」

碧は少し話して部屋で眠りに就いた麻美から離れて、隼人の部屋に入っていった。後から行くと耳打ちしていたから、隼人は起きて待っていた。母も二人が一緒に寝ることに反対はしなかった。むしろ仲良く出来る事が羨ましかったぐらいだ。

「隼人さん、麻美ちゃんね全部話してくれたのよ。お父さんとお母さんのことから本当の母親のことまで。もう心配しなくていいから、あの子なりに考えてやってゆけると思うわ」
「ありがとう。世話かけたな」
「ううん、大好きな隼人さんの妹なんだもの・・・当然よ」
「碧・・・今夜は失敗しないように頑張る」
「いいよ、そんな事気にしなくて。好きなことに変わりはないから」

二人はベッドに入ってこれから来る感動の時間をゆっくりと回し始めた。

時間はたっぷりとある。焦らなくてもいい、そう隼人は言い聞かせた。
「碧がどうして欲しいか言ってくれたらそうするよ」
「隼人さんの好きにして・・・」
「おれ、良く解かんないんだ・・・つまりその・・・碧が感じるところが」
「抱き合って、好きって言ってくれるだけで碧には十分なの。隼人さんが気持ちいいって思うようにして・・・」
「嫌なんだよ。自分だけって言うのが」
「して欲しいことあるけど・・・恥ずかしい声を出しちゃうかもしれないよ・・・きらいにならない?」
「何でなるんだよ。そうなって欲しい」
「じゃあ、ここを・・・指で・・・」碧は隼人の右手を握り自分の一番敏感なところに持っていった。
「これで・・・いいのか?」隼人はその場所をゆっくりと撫で始めた。
「うん・・・そこ・・・」

初めて身体が感じるという気持ちになった。碧になってから今日まで一度も触れることが無かったから、初めての悦びに声を出さずにはいられなかった。

「隼人さん・・・来て・・・我慢できないから」
「うん、おれもだ」

ゆっくりと碧の中に隼人は入っていった。身体が重なるという事はこういう感覚だったのか・・・男では味わえなかった深い満足感が碧の身体を包んだ。

どれぐらい時間が経ったのか解からなかったが隼人は動かなくなっていた。離れることなく強く抱きしめていてくれる行為が碧を最大の満足に導かせた。
「碧は幸せだったよ、やっと一つになれたから・・・ずっとこうしていたい・・・離さないで隼人さん」
「おれもだ・・・碧は誰にもやらない、俺の嫁さんにする」
「うん、いつかきっとね・・・」

身体を離して寄り添うようにして眠った。心地よい疲労感からすぐに深い眠りに入った。


『神』はどうしても碧の中にいる隼人の魂を呼び戻す必要があった。そしていよいよその準備にかかった。
強いエネルギーを碧の中に放射して身体から魂が抜け出せるようにした。

隣で寝ていた隼人は目覚めて、裸の碧をそっと抱きしめた。
柔らかくてしっとりとした肌が隼人の欲望を誘う。明るくなった部屋の中で碧の身体は「美しい」としか言いようが無かった。
「碧・・・もう一度したい・・・ダメかい?」
返事はなかった。
「碧・・・怒ったのか?どうした?」
寝ているように見えたが、起きない事が隼人には不自然に感じた。少し身体を揺すって、
「起きろよ!碧ってば・・・碧!・・・」
依然返事はなかった。
何度も何度も隼人はそう言い続けたが、碧からの返事はなかった。
これは大変な事になったと直感してまだ寝ていた母親を起した。

「母さん!起きて!大変なんだ、碧が・・・碧が変なんだ。ちっとも目を覚まさない!」
ビックリした美樹は隼人と一緒に部屋に入り様子を見た。碧は眠っているようにしか見えなかった。二人ががりで起したが、様子は変わらない。
「隼人、救急車呼びなさい!そして小野さんの家に連絡もして!」
「うん、解かった」

騒がしくしていることに麻美も気付き起きてきた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「麻美、こっち来い」隼人は強く抱きしめた。
「何するの?どうしたの?」
「碧が・・・おかしんだ。今救急車を呼んだ。しっかりしろ!お兄ちゃんがついているから」
「いや!何それ?何があったの!いや・・・いや・・・」
麻美は直ぐに泣き出して取り乱した。隼人は自分もそう叫びたいぐらいの気持ちであったが、今は麻美の気持ちをなだめる事が先だと堪えた。

甲高いサイレンの音が聞こえて救急車は家の前に止まった。何も着ていなかった碧に未樹は自分の寝巻きを着せた。程なく車で由紀恵と秀之がやって来た。
美樹は二人に頭を下げて事情を説明した。

「どうしてこうなったのか解かりませんが、大変なことをしてしまいました・・・なんと言ってお詫びして良いか解かりません。病院に着いたら隼人から連絡が入りますので、向かわせてください」
「高林さん、事情が解かるまで何も言えませんが、碧に変な事は無かったのですか?」
「何もありません。娘と仲良く話もしていましたし、変わった様子など感じられなかったものですから、ビックリしています」
母親の傍にいた麻美は、
「お姉ちゃん、死んじゃうの?」と泣きながら言った。
「何言ってるの!縁起でもない・・・大丈夫よ、お医者さんに診せたら治るから」由紀恵たちの前でそう気遣った。

美樹の自宅の電話が鳴った。
「もしもし・・・隼人!・・・うん、解かった直ぐに行く」
「今電話がありました。休日なので近くの救急病院は医師が居なくて、玉川学園付属病院になったそうです。場所ってわかりますか?」由紀恵にそう尋ねた。
「そこは碧が通っていた同じ病院ですから解かります。直ぐに行きましょう。ご一緒なさいますか?」
「ありがとうございます。娘も一緒にいいですか?」
「どうぞ。私も娘には連絡しますから」

4人を乗せた車は二子玉川にある病院へと向かった。弥生は上松の車に乗せてもらって同じく病院へと向かった。由紀恵はとりあえず状況が解からないままに、碧が目を覚ましてくれるようにと祈っていた。事故から3年、ようやく忘れることが出来て、これからという時だったから動揺は隠せなかった。

病院について隼人とそれぞれの家族は待合室でしばらく待たされた。
1時間ほど経ってから、担当の医師と看護師がやってきて開口一番、
「患者さんは非常に危険な状態にあります。しかしながら、生命は維持しており、呼吸と心拍数は正常値なので信じられません。脳波が非常に弱い状態で自発呼吸をしている事は奇跡です。詳しくは精密検査後になりますが、ひとまず直ぐに緊急事態になるというようなことはなさそうです」

碧をしばらくしてICUから、一般病棟に移すから面会は自由に出来ると看護師から説明を受けた。秀之は由紀恵だけを残して一旦家に戻るといった。そして、高林家も自宅に戻っていった。由紀恵にとって長い夜が待ち構えていた。それは過去と向き合う時間であり、懐かしむ時間でもあった。