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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「神のいたずら」 最終章 神のいたずら

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最終章 神のいたずら


朝から雨が降っていた。午前中の部活を終えて碧は早足で自宅へ戻った。昼ご飯を済ませて、麻美への誕生プレゼントを買うために早めに家を出た。自分が気に入っているワンピースと同じものをプレゼントしようと渋谷に出かけた。麻美のサイズに合うピンク色を見つけて、ラッピングしてもらい雨に濡れないように抱きかかえて傘を差し隼人の家に向かった。

玄関のチャイムを鳴らす。
「アッ!お姉ちゃんが来た」そう言って麻美は台所から走ってドアーを開けた。
「こんにちわ!来たわよ」
「待ってたよ。こっちに来て・・・」
「お誕生日おめでとう!これ、プレゼント!気に入ってくれるか解らないけど、私の持っているものと同じなの」
「わ〜い、嬉しい。開けていい?」
「どうぞ」
包みを開いて取り出した中身は、裾に可愛いフリルのついたピンクのワンピースだった。

「着てもいい?」
「いいよ」
その場で今着ているものを脱いで、麻美は着替えた。
「可愛い!私にピッタリ!ありがとう・・・お母さん見て!」
「まあ、素敵!可愛いお洋服ね。すみません気を遣って頂いて」
「いいえ、誕生日ですもの・・・気に入ってくれて良かった」
「お姉ちゃん、今お母さんと一緒にご飯作ってたの。お兄ちゃん5時過ぎには帰ってくるって言ってたから、それまでお手伝いしてる。テレビでも見て待ってて」
「うん、気にしないでいいよ。隼人さんが帰ってくるまで待ってるから」
「麻美、ここはお母さんがやるから・・・碧さんとお話してたら?」
「ほんと?構わない?」
「ええ、大丈夫よ」

居間で一緒に座って話をした。学校のこと、友達のこと、麻美はたくさん話した。
「お泊りでしょ?ご飯の前にお風呂入るから、一緒に入ろう?」
「ええ?麻美ちゃんと一緒に?」
「イヤ?」
「イヤじゃないけど、どうしようかな・・・」

こんな時間に風呂に入ることが無かったから、ちょっとためらっていたが、何度も催促されて碧はそうすることにした。

「前から聞こうと思っていたんだけど、お姉ちゃんって髪染めてるの?」
「ううん、生まれたときからこうなの。パパがクォーターって言って、ロシア人の血が混じっているの」
「そうなんだ。だから目も少し青いんだね・・・麻美羨ましいなあ・・・お姉ちゃんのようにきれいになりたい」
「麻美ちゃんだって、すべすべの肌してるし顔だって可愛いと思うよ」
「ホント?お世辞じゃない?」
「ホントよ」
「可愛いって言われたこと無かった・・・暗いってよく言われてきたの。お父さんがねお母さんと喧嘩して、お前の子供じゃないから優しく出来ないんだろう!って言ったの。私が聞いてないと思って言ったみたいなんだけど、聞こえたの」
「それで解ったのね」
「うん、お兄ちゃんに相談したら、気にすんな、って言うだけで本当の事言ってくれなかった。怖くてお母さんにも聞けなったし」
「そうね、麻美ちゃんにはずっと今のお母さんしか記憶がないんだものね」
「そうなの。本当の母は私を産んで亡くなったの。それでお父さんの会社で働いていたお母さんと結婚したの。お兄ちゃんは知っていたのにずっと私には隠していた」
「隼人さんはあなたのこと本当の妹と思っているから、話す必要なんかないって思っていたのよ。お母さんだって同じよ。どうしても気になるの?」
「麻美にはお母さんしかいない。聞いてもどうこう言わないけど、本当のことを何故話してくれなかったの?解っちゃうのに」
「麻美ちゃんはお母さんになってないから理解出来ないでしょうね。碧もそうだけど、大切なものを失いたくないから言えないのよ。辛かったのは麻美ちゃんだけでなく、お母さんも一緒よ。隼人さんもそう・・・」
「お父さんが悪い!お母さんや麻美のこと捨てて出て行ってしまったから・・・お兄ちゃんに、着いて来いって言ったのよ。行くわけ無いのにね・・・お兄ちゃん、お母さんを守るから勝手に出て行け!って叫んだの。麻美もう怖くて・・・泣いちゃった」

思い出したのか、見る見る涙が溢れてきて、肩を震わせるようになった。碧は強く麻美の身体を抱きしめて、
「もういいの・・・それ以上言わなくて。聞いたお姉ちゃんが悪かった。許して・・・」

風呂場から麻美の泣き声が聞こえて母親の美樹は心配になった。
「どうしたの?麻美、何かあったの?」外から声を掛けた。

母親にそう聞かれて、碧は少し扉を開けて、大丈夫ですと返事した。
「お母さんに聞かれちゃったね。今の話は言わないで置こうね」
麻美は大きく「うん」とうなづいた。

5時を少し回って隼人はバイト先から雨の中を駆け足で帰ってきた。
「ただいま!碧は来てる?母さん・・・」
「見えてるよ。今、麻美と一緒にお風呂に入ってる」
「一緒にか!仲が良くなったなあ・・・」
「そうね、碧さんと気が合うのよね」
「違うよ、碧が気遣ってくれているんだよ。麻美が寂しがっていたから」
「そうかも知れないって感じていたけど、負担にならないかしら」
「大丈夫だよ。碧はああ見えてしっかり大人だから。俺さ、二人に聞こえないから言うけど、碧のこと大切にして、あいつが許してくれたら結婚したい。母さんはどう思う?」
「結婚なんて、まだ考えられない。でもそういう隼人の気持ち大事にしたいわ。麻美も本当のお姉さんが欲しいって言ってたから、喜ぶわよ」
「俺高校中退したけど、仕事真面目にやってお金たくさん稼いで碧のご両親に堂々と言うんだ・・・嫁さんに下さい!って」
「お母さんその時を楽しみに待ってるわ。あなた服濡れているじゃないの、着替えてきたら?」
「そうする」
隼人は濡れている服を脱いで脱衣場のかごに入れた。すりガラス越しに碧と麻美の姿が映っていた。丁寧に身体を拭いてやっている碧に麻美のお姉ちゃんという声が聞こえた。

隼人は母と碧と麻美がいる家庭を想像した。自分が仕事から帰ってきて、碧が麻美と一緒に食事の支度をして、母が居間で寛いでいる姿を・・・きっと将来こうなる、いやこうしたいと願った。

風呂から出てきて、碧は「お帰りなさい。おじゃましてます」と隼人に言った。麻美が、「一緒にお風呂に入っていたんだよ!いっぱい話した」と嬉しそうに言ったので、頭をなでて、「良かったな。お姉ちゃんと一緒で」そう返事した。

テーブルを囲んで4人は麻美の誕生日祝いを兼ねた食事を始めた。美樹は隼人が碧と結婚をしたら、毎日がこんなに幸せな雰囲気で食事が出来るのだろうと、ちょっと嬉しくなった。

ハッピーバースディを歌い終えて、ろうそくの炎を麻美は一気に消した。拍手をしてケーキを切り分け誕生日の儀式は終わった。12歳になった麻美は来年碧の行っている中学に進学する。碧は卒業して高校に行く。来年もまたその次もずっとずっとこうして誕生日会が出来るといいね、と母親の美樹は話した。

「碧お姉ちゃんきっとずっと来てくれるよ。そうでしょ?」
「麻美ちゃん、ずっと来るよ。約束する」
「いつかお兄ちゃんと結婚するんだよね?麻美のこと本当の妹にしてくれるよね?」
「麻美、碧さんにも都合があるのよ。まだお付き合いが始まったばかり。あまり無理を言わないようにしないと、困ってしまうわよ」母親は麻美のほうを見て言った。