怪我猫看病記 ロッキーのこと
祝。とりあえず威嚇もできる
2006年12月6日(水)
交通事故の野良猫がうちに来て3日目。
動物病院は、本当は休診の日なのに、診察していただいた。
さすがに助手の人はいないので、押さえたり、ちょっとしたお手伝いは私がする。
フギッ!と声をあげ威嚇するだけでなく、引っかく噛み付く(あごが折れているのに!)で、かなり元気になってきた。
飛び出してしまっている片目も、縮瞳の状態から、不完全ながらも瞳孔が大きくなった。
視力回復については、かなりドクターもあきらめモードだったのだが、ちょっと希望が持てるかも、と言われた。
今日もまた空気を抜く予定だったのだが、暴れるので取りやめになった。
明日以降、あごの骨の手術や、空気抜き、血液検査などをしていく予定だが、呼吸の乱れが激しいのは相変わらずなので、鎮静剤や麻酔のリスクと天秤にかけながらになるだろうとのこと。
蚤がいるようなので駆虫薬も滴下してもらってきた。
ずっと以前飼っていた猫が蚤だらけになったときは大変だったので、対策はしっかりしておかないと。
手術のときはついでに去勢もしてもらうことになった。
ドクターからの提案がなくても、元気になった暁には、それはお願いするつもりだった。何度も麻酔をするリスクを冒すよりも、一気にやってしまうほうが良いというアドバイスに従った。
オスは子供を産まないのだから必要ないとか、去勢するのはかわいそうだという人もいるが、私はそうは思わない。
この子はオスだが、たとえなつかず野良に返すのだとしても、去勢はしたいと思う。メスをめぐっての喧嘩は減るし、不幸な野良猫を増やさないで済む。ドクターと同意見で良かった
映画の主人公のように、倒れても立ち上がる強さを念じ、ロッキーと命名。診察券にも名前が記入された。
12月8日(金)
昼から半日入院。
手術を受け、夜帰ってきた。
驚いたことに、この動物病院、午前と午後の診療時間ががかなりあいているのは、その間に手術などをしているのだ。
経過はそこそこ良好らしい。
今日は、あごの骨をくっつけること、まぶたを縛ること、そして、去勢。この3つの手術と、鼻から食道までチューブを通すことが行われた。
目が飛び出ているのはその後ろにおそらくは出血した血腫があって、眼球を押し出しているのだと考えられるので、まぶたを縫合して押さえ、これ以上乾きすぎたり、傷ついたりするのを防ぎつつ、自然に血腫が吸収されるのを待てば、多分元に戻るだろうとのこと。
あごは左側の脱臼と、中心部が折れていたのを金属のワイヤー(?)を入れて固定してもらったので、よだれも出なくなった。
骨盤の骨折は、そのままにして自然にくっつくのを待つのでも大丈夫だろうということだ。
信じられない気もするが、ドクターの判断に任せるしかない。
しみじみ眺め、人相、いや猫相がだいぶ良くなったねと皆で話した。
エリザベスカラーをしているので、うっとおしそうだが、しばらく我慢してもらうしかない。
今までは点滴だけの栄養補給だった。
どろどろに水で溶かしたa/d缶(高栄養の療法食の缶詰、まるでレバーペーストみたい)を口から流し込んでやる強制給餌も暴れてうまくいかなかったので、鼻から食道にチューブを通し、シリンジで押し込んで強制給餌をすることになった。
早く、自分から食べられるようになると良いのだけれど。
2006年12月9日
なんと、今朝、金魚蜂に手を突っ込んでいるのを夫が発見!
見られたと見るや、元の段ボールにすっ飛んでご帰還。
金魚は命拾いした。
びっくりだ。骨盤折れてて動くのも大変そうなのに。
でも、事故時も道路の真ん中から10メートルくらいは自分で移動したくらいだ。
野生児はたくましい。
まだ、与えられたえさを人の見ている前で、自分から食べるほどには、私たちに気を許していないのかもしれない。目撃しなかったら、金魚を自分でとって食べることができたのだろうか?
明日はドライフードを置いて、知らん顔をしてみよう。
2006年12月10日
ドライフードを置いてみたが、やはり食べてはくれない。
なかなか食べさせるのが大変だ。
2006年12月11日
再診で皮下点滴注射。
これをしているから何とか体力を保っているのだろう。
でもこれからは、食べて体力つけないと。
内服薬も初めて処方され、砕いて水溶きa/d缶に混ぜ、シリンジで鼻から通したチューブに押し込む。はじめほどではないにせよ、呼吸も荒く、痛々しくて、口から食べてくれることを切に願うが、上手くいかない。
2006年12月12日
ご飯与えるのも一苦労。シリンジで水溶きa/d缶を鼻から通したチューブに入れるが、詰まってしまい、なかなか入っていかない。
さんざん威嚇され、ひっかかれ。
こちらがめげそうになる。
2006年12月16日
交通事故で生死をさまよった猫だが、呼吸もほぼ正常に近い状態になって、少しは慣れてきたようだ。
飛び出してしまっていた眼球を押さえるため、縫合してあったまぶたの抜糸をした。
CMでやっているエリザベスカラーのようなのを首に巻かれていたせいか、鼻からチューブを入れていたせいか、自発的に飲み食いしようとしなくて、心配していた。
目のことだけを考えるならば、もう少し後で抜いたほうが良いのだが、やはり全身状態を浴するためにも、自分から食べるというのは大事だということで、抜糸することになった。
鼻から入れていた強制給餌のためのチューブはすっかり詰まってしまって役に立たないので、外された。
かわりに、シリンジで口から少しずつ流し込んでやると、はぐはぐ言いながらどうにかこうにか食べてはいた。1日3回、一回に高栄養の猫缶(a/d)を倍希釈で30cc前後。でも、2,3日に一度の輸液とその程度の食事では、さすがに体重も落ちてくる。脱水状態だった事故直後でさえ4.7Kgあった体重が4.0Kgにまで落ちてしまった。(事故以前、野良だったこの子はえさ不足なのか病気だったのかはわからないが、事故によって脱水を起こしたわけではなさそうだ)
目は抜糸してみたら、思いのほか、角膜が傷ついていることが判明した。
せっせと点眼して乾燥と感染を防ぎ、様子を見ることになった。
瞳孔は戻ってきているので何とか治って欲しいが、ある程度の覚悟は必要そうだ。もしかしたら、片目は失明かも。
ほんの十日前は生死の境をさまよっていたのだ。
それを考えれば、できることをして、だめならそれも仕方がない。
ほとんど一日中箱の中でおとなしくしているが、近づくとかぁっと威嚇し、点眼しようとすると引っかく噛み付く。怖いことをされる、という恐怖心ゆえ、と思いたい。
静かに撫でてやれば、おとなしく撫でさせる。
そうこうしているうち、えさは直接器を近づけても舐めて食べるようになった。
12月19日
薬を取りに行ってきた。
ロッキーは連れて行かなかった。
元気になってきたので、ますます凶暴になっている。
作品名:怪我猫看病記 ロッキーのこと 作家名:白久 華也