マイクロ・バン
そうあの日――。
僕は思いきって綾香に告白をした。
「ねぇ綾香。いや、綾香さん。ボクと個、個人的につきあってもらえませんかっ!」
実は、その時まで僕は七割方はオーケーしてもらえるんじゃないかと思っていた。
中学二年になって同じクラスになった連中。
不思議なものでクラス替えがあると、すぐに幾つかのグループが出来る。
中学二年ともなると始めから男女混合のグループなんかが出来たりして、僕もそんな混合グループの一つに繰り入れられる事になった。
「一緒に帰ろうぜ!」
声を掛けてきた太一は小学校の同級生で一年の時は別のクラスだった。
僕はと言えば、一年の時に仲の良かった連中は他のクラスで固まっていて、その固まった連中に新しいクラスの仲間が混ざっているものだから、何だか僕はそこに入ってゆくのがためらわれた。僕の部活の剣道部の練習日が彼らのバスケ部と合わないというのも一因かもしれなかった。
そんな訳で数日間は一人で帰宅していたところで、部活の無い日の帰り道で太一は声を掛けてきたのだ。
太一はその時、綾香を含む男女二人づつ、四人の仲間と歩いていた。
僕はその組み合わせを訝しんで、彼らを見回して言った。
「いいけど、邪魔なんじゃないの」
「……。ばーか、俺達はそういんじゃねーから」
一瞬の沈黙の後、太一は可笑しそうにそう言った。
綾香とは小学校の一・二年が同じクラスで、その頃はヤセ方の色黒でショートカットで、男みたいなヤツだと思っていたのだけど、そんな縁も有ってお互いに気安く話しをしていたけど、小学生じゃ気が付かないようないろんな面が見えてきて、それがいちいち僕のツボにペチペチとはまって行く様になる。
それから僕達は海に、山に、遊園地にと、微妙にメンバーを増減させながら楽しく過ごした。そして僕は綾香への思いを少しずつ溜め込んで行き、とうとう成長過程にある僕の胸の内には収まり切れなくなってしまった。