マイクロ・バン
<マイクロ・バン-Micro Bang->
ヒュンッ。
また一つ僕の青春の一ページが暗黒の淵に吸い込まれて逝った。
そして僕はそいつをあまり刺激しないようにそうっと広口のガラスビンのフタをした。
このビンは台所の片隅で埃を被っていた、以前はハチミツが入っていた大振りなビンだ。
こいつはここが気にいっているのか、中に封じ込めておけばかつての様な乱暴狼藉を働く事もなくおとなしくしている――。
そして時々、僕が消し去りたいと思っている過去と現在と未来をこの世からキレイサッパリと消し去ってくれるのである。
はぁ。
そのガラス瓶の中で安定して浮揚している黒い小さな点を見て、僕は深いため息をついた。
針の先にも満たない小さな黒い点がどうしてこうもはっきりと見えるのは、他でもないその周りが酷く歪んで見えるからだ。勿論それはガラス瓶の歪みのせいだけじゃない。
一週間前に突然現われたこいつは、初めのうちは少々粗暴な動きもしたけど、今はすっかり落ち着いて殆ど眠っているようでもある。
いやむしろ何もかも諦めて不貞寝しているという表現がぴったり来る。
この、とても生き物のようには見えないこの点にこんな気持ちを抱くのは、コイツが元々僕の身体から飛び出したモノだからだろう。
あの日、家に走って帰ってきた僕は、僕の絶望の凝縮された分身としてこの黒い点を生み出した。
あの時の僕は全身が絶望で満たされていたので、もしかするとこの黒い点こそが僕そのもので、僕が僕だと思っているこの身体は本当は単なる抜け殻なのかも知れない――。
ヒュンッ。
また一つ僕の青春の一ページが暗黒の淵に吸い込まれて逝った。
そして僕はそいつをあまり刺激しないようにそうっと広口のガラスビンのフタをした。
このビンは台所の片隅で埃を被っていた、以前はハチミツが入っていた大振りなビンだ。
こいつはここが気にいっているのか、中に封じ込めておけばかつての様な乱暴狼藉を働く事もなくおとなしくしている――。
そして時々、僕が消し去りたいと思っている過去と現在と未来をこの世からキレイサッパリと消し去ってくれるのである。
はぁ。
そのガラス瓶の中で安定して浮揚している黒い小さな点を見て、僕は深いため息をついた。
針の先にも満たない小さな黒い点がどうしてこうもはっきりと見えるのは、他でもないその周りが酷く歪んで見えるからだ。勿論それはガラス瓶の歪みのせいだけじゃない。
一週間前に突然現われたこいつは、初めのうちは少々粗暴な動きもしたけど、今はすっかり落ち着いて殆ど眠っているようでもある。
いやむしろ何もかも諦めて不貞寝しているという表現がぴったり来る。
この、とても生き物のようには見えないこの点にこんな気持ちを抱くのは、コイツが元々僕の身体から飛び出したモノだからだろう。
あの日、家に走って帰ってきた僕は、僕の絶望の凝縮された分身としてこの黒い点を生み出した。
あの時の僕は全身が絶望で満たされていたので、もしかするとこの黒い点こそが僕そのもので、僕が僕だと思っているこの身体は本当は単なる抜け殻なのかも知れない――。