マイクロ・バン
部屋中に散らばる恥ずかしい品を集める僕を横目に綾香は一番見られたくない手紙を抱えて背中を向けてチラチラと読んでいる。
僕が返せよ、と言っても。あたしの名前が書いて有るからあたしのだよ、と言って抱え込んでしまった。
肩を掴んでこちらを向かせようとすると「やだー、なにすんのー」と大きな声を出した。
「どうしたのーっ」とすかさず一階から声が掛かる。
僕が半ばパニックに陥っていると、ブラックホールのヤツはいよいよ耐えられなくなったらしく――。
バンッ! と大きな音をたてて爆発した。
まだ読んでもいない借り物の本や、書き損じの手紙。何枚もの写真やその他もろもろが天井から降ってきて、最後には大きく広がったタオルケットが僕と綾香をふわりと包み込む。
僕と綾香はタオルケットを被ったままで見つめ合う。その一瞬、宇宙の時間が止まった気がした。
母さんが階段を上がって来る音がする。
「いやーっ、やめてー」
「何やってんのあんたたち!」
勘違いした二人の声。そしてタオルケットから逃れた綾香の平手打ちが僕の頬に炸裂。反動で横を向いた部屋の入り口には母さんの驚愕の顔。
そして綾香は立ち上がると、おばさん違うのよ、と一応弁解の言葉を残しながら「さようなら」と言って帰ってしまった。
その後、母さんに全てを白状させられ、悪い事をした訳でもないのに怒られ、また同情もされて散々だった。
次の月曜日。今度はどんなに体調が悪いと言っても信じてもらえず。僕は重い心で学校に行った。