妻の企み
名古屋駅から京都駅まで、のぞみで35分で着いてしまう。
直樹は、それでもその朝の束の間の時を大事にしたい。
じっとシートに埋もれ、目覚めにとコーヒーを静かに飲んでいる。
今週の仕事、それをどうしようかと考え出してはいるが、やはり佳奈美との事が気になって来る。
「結婚してもう三年か、いつまでこんな事を繰り返す事になるのかなあ」
直樹はやるせなさそうに呟いた。
「好きで一緒になったはず、それなのにバラバラ、
二人で一緒に暮らさなきゃ家族にもならないし、何のために結婚したのかわからないよなあ」
昨夜の佳奈美との、失神に至るほどの愛の出来事が霞んで来る。
佳奈美は娘・愛華を義母に預け、今仕事を辞める気などはない。
そのために夫の直樹には、二週間に一度しか逢う余裕がない。
しかも、それは中間点の名古屋で。
「俺達の結婚、一体 … それは何だったんだろうか?」
そんな事まで、直樹は考え始めている。
しかし直樹には、その打開策が見つからない。
これからどうしたら良いのだろうか?
朝からこんな事で悶々としている内に、あっと言う間に京都駅に着いてしまった。
そして直樹は晴れない気持ちのまま、オフィスへと直行するのだった。