妻の企み
直樹は疎水周りをもう一歩きして、家に戻った。
佳奈美が珍しく家にいる。
「今日は、アルバイトじゃなかったの?」
直樹はそっと聞いてみた。
「今日は終わったわ、今からカラオケよ、楽しいわよ」
佳奈美はそんな事を言って、一人はしゃいでいる。
「そうか、まあ楽しんでおいで」
直樹は優しく返した。
そんな時、佳奈美が何を思ったのか、突然に聞いて来る。
「ねえアナタ … 私の事、今でも愛してる?」
「えっ!」と直樹はびっくりした。
この歳になってそんな事を聞かれても、照れくさいというよりは今さら何をという感じがする。
どう答えて良いものかわからない。
直樹は「うーん」と口ごもってしまった。
すると佳奈美から、きつい一言が飛んで来る。
「返事は?」
確かマレーシアで生活を始めた頃、ガールフレンドの件で同じ問い詰めがあったなあ。
直樹はそんな事を思い出している。
そして、佳奈美は何かを企んでいそうだ。
しかし、直樹はそれに逆らわず、素直に乗っかって行こうと思うのだった。