妻の企み
愛華は、佳奈美の前夫との間に出来た娘。
そしてまだ幼かった。
だから手が掛かるのは事実。
そんな幼子を、佳奈美と義母が手が掛からない歳まで育てて来た。
直樹にとって、愛華は他人の子。
しかし直樹は、愛華も含めて佳奈美を愛し、結婚したはず。
佳奈美は、愛華がある程度大きくなり、手が掛からなくなってから直樹と一緒に暮らすべき。
多分、こぶ付き新婚時代の狭いアパート暮らし、
そんな中でそう思ったのだろう。
それが佳奈美自身の責任であり、
新郎・直樹に対する礼儀だと思っていたのかも知れない。
そして時は経ち、愛華は育ち、その時期がやって来た。
佳奈美は、あれほど仕事仕事と拘(こだわ)っていた勤めを、あっさりと辞めた。
そして母一人を日本に残し、幼い愛華を連れてマレーシアに来ると言う。
我々の結婚は何だったんだろう。
このままではもう意味がない。
離婚するか。
そんな事を考え出していた矢先の事だった。
直樹はとにかく嬉しかった。
そして二週間後、
佳奈美は幼い愛華の手を引いて、クアラルンプール国際空港の到着口から出て来たのだった。