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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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花、咲き乱れる世界

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 5

 部屋に残された研究員の二人は顔を見合わせる――。
「加藤くん。先生どうしたんだろう。なんかすごくがっかりしたみたいに見えたけど」
「メイさん、それはあまりにも、ですよ。先生の今一番の研究対象が何だかは分かってるでしょう」
 必要以上に顔を近づける加藤の真剣な目に、さすがのメイもたじろいだ。
「うん。植物の思考とその伝達について……。あっ」
「そう。植物の思考については、何とも言えないけど、外から入ってきた他の木の影響で温室全体の植物、種類の違う植物までもが開花したとしたら、そこには思考というか何かの意図が有ってそれを伝えた何かが有ったんじゃないかって事」
「そっかぁ、そうだよね」

 植物の情報伝達物質については、今やその存在を否定する研究結果は無い。
 ある植物は病原菌や害虫が発生すると、特殊なフェロモンを出して周囲に知らせ、それに対する防御反応を示すという例がある。植物は通常、自ら移動する事は出来ないので、害虫や病原菌への対処は周囲も含めて行う必要がある。そのため、一本の木がそういう不具合に遭遇すると、特殊な物質で周囲に知らせ、害虫の嫌う味や臭い、病原菌の繁殖を防ぐ物質の分泌を促すのである。

 しかしそれは反応とか反射と呼ばれるものであって、意思とか思考と呼べるものではない。
 保志はそれらも含めて、植物はもう少し高度な思考を行っているのではないかと考え、その証拠を探そうと日々研究をしていたのである。