昇神の儀
「このエロオヤジ神! アンタ、神さん張ってんでしょ、もっと格調高い見通しは出けへんのかい! ──だけど、私の願いを叶えてくれはったら、見通してくれてもええわよ」
どうもこの亜里紗、なかなかのオナゴはん、神様とネゴに持ち込もうとしている。それに気付かない純真な神様は調子に乗って態度を急に大きくする。
「うんじゃ、神の名誉にかけて、何でも叶えて進ぜよう」
こんな言質を取った亜里紗、もう冗談を言ってる場合じゃない。眼差しは真剣そのもの。
「私の願いは……、私、神様と結婚したいの。ねえ、これが幸せになるための一番の早道でしょ。ダンナを操りさえすりゃ、すべての幸福が手に入るのよ。世界は私のものになるのだわ。だから、イケメンでなくっていいから、紹介してちょうだい!」
神様はこんな要望を受けて、話しの行き掛かり上の……口上一発。
「亜里紗姫命 盟約 恐美恐美母 白須」
(ありさひめのみこと めいやく かしこみかしこみ もをす)
高見沢はこんなやり取りを横で耳にして、「なんだ、これっ、どういう会話なんだよ」とわけがわからない。
それでも神様も参加してくれた祝賀会。「えらい賑やかだなあ」と、高見沢は大満足の内にさらに盛り上がっていく。
だが、そんな中にあって、今度は神様が先ほどまでの勢いから一転、落ち込んでる。
「高見沢さん、私ねえ、もうそろそろ帰らないとダメなんですよ。明日の予定も入ってますし、これ以上は上司に叱られます。天に昇神したいのですが、なんとかなりませんか?」
こんな相談を持ち掛けられた。
「う−ん、弱りましたね、どうしましょうか」
高見沢は神様の天上への送還、その妙案がなくほとほと困ってしまう。