小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

昇神の儀

INDEX|11ページ/11ページ|

前のページ
 


 そんな時に、司会者の方から「みなさん! 宴もたけなわですが、この辺で中締めとさせていただきます。高見沢さんに中締めをお願いします」と突然声が掛かった。
「えっ、もうそんな時間か、仕方ないか」と高見沢はみんなの前へと進み出る。そして締めの挨拶を。
「みなさん、本日の竣工式までみんな協力してやってきたと思います。これからもこの絆で頑張って行きましょう。ここにおいでの神様は、これからの我々の安全と操業の安定を誓約いただきました。しかし、まずは神の国に戻ってもらわないと、約束を果たすことはできないと仰ってます」
 高見沢はここまで一気に演説し、そして一拍おいて気を静め、あとを続ける。
「中締めは、一般的に三三七拍子ですが、今宵は、神様に昇神していただき、約束をきっちりと守っていただくため、警蹕(けいひつ)の『オー』で締めたいと思います。みなさん大きな声でご唱和下さい」

 高見沢はこう話し掛け、さらに「さあ、みなさん、前で手を組んで、スプーンで勿(しゃく)を構えた形にして下さい。そして、九〇度まで拝礼して下さい。──Are you ready?」と準備万端かどうかを大きな声で確認をした。
 するとみんなから「Im ready.」と。これを合図に、高見沢は下腹から実に勢いのある発声で。
「ゥウウウ−オオオ−オオオ……オ……」

 すると会場にいる仲間たちも、コンパニオンのお姉さんたちも、特に亜里紗は必死に、全員声を合わせて「ゥウウウ−オオオ−オオオ……オ……」、警蹕の大合唱だ。実に神がかり的な雰囲気となる。
 そして神様の方を確認してみると、安堵感一杯の顔で、もうふんわりと宙に浮かんでいる。
「おっおー、これぞ昇神の儀ぞ、スッバラシー!」
 高見沢がそう感動した瞬間に、神様はあっという間に、居酒屋の天井をぶち抜いて……。
「ゴツン、ゴツン」というまことに痛そうな音を轟かせ、天に向かって消えて行ってしまった。
 そしておもむろに、高見沢は全員に告げるのだった。

「昇神の儀、ただ今、つつがなく終了いたしました。メデタシ、メデタシ」


                            おわり

作品名:昇神の儀 作家名:鮎風 遊