終わりのない物語
「いやいやいや!「彼」・・・あ、いや、リョウ君は全然悪く無いよ!」
「その、さっきから気になってたんだけど・・・このはっぴとか「彼」とか」
「あ「彼」はね私の仕事を手伝ってくれたの、この真夏の雪を降らせたのも「彼」なんだ」
「良かったらそのことについてもっと詳しく教えてもらえないかな」
「うん、いいよ・・・「彼」はね・・・」
その後はつかさんからお盆に何があったのかを聞いた。
正直驚いた。僕がそんなことをしてたなんて・・・。
はつかさんの言葉じゃなければ信じられなかっただろう。
「そっか・・・でも、その話を聞いた限りではこんな状況は起きないはずだよね」
「うん、私もそう思う・・・私の能力も除霊きな粉を作るだけだし、こんな事出来ないよ」
「ちなみに、除霊された人の意識ってどのくらいで戻るの?」
「う~ん・・・人にもよるけど大体きな粉かけてから十分くらいティアないかな?」
「リョウ君はそれくらいで起きたし」と僕を見ながら言うはつかさん。
「ティアあ、人の意識が戻らないのもおかしい・・・きな粉が効いてるのは僕で証明済だし」
「そうだよね、どうしちゃったんだろ・・・」
「どうしたんだよ、二人そろって深刻そうな顔してよ!」
僕達が話し合ってる所に両手に食べ物を持ちながらルークがやってきた。
・・・まだ食ってたのか。
とりあえず、簡単に事情を説明する。
「ふ~ん・・・珍しい事もあるもんだな」
あまり気にしてないようだ。
話しても無駄だったか。
まあ、魔力がどうのとかいってたからこういう事態には慣れっこなのかもしれない。
とりあえず、疲れてることもあり僕らは目の前の問題を棚上げし休む事にした。
いつまでも裸同然の格好では困ると思いルークにはとりあえず僕の服を貸した。
「ありがとな!ホントたすかるぜ・・・ちょっときついけどまあ我慢すっか」
ルークはそういって僕の服を着た。
確かに筋肉質なルークの体には僕の服はきつそうだった。
一方、ティアは寝たままなので着替え用が無い。
なので、とりあえずルークに毛布を渡した。
出会ってから今までに見たことが無いようなやさしい手つきでティアに毛布をかけてあげるルークの姿を見ていると彼にとって彼女がどれだけ大事なのかが痛いほど伝わって来た。
「いつまでもソファじゃティアさんも疲れが取れないと思うんだ」
僕は提案する。
「よかったら奥に両親の寝室があるからそこ二人で使ってよ」
「ああ、悪い・・・ありがとな」
早速、ティアを抱え寝室へと向かうルーク。
「はつかさんも今日は疲れたでしょ・・・二階に僕の部屋があるからよかったら使って」
「ティアあ、リョウ君はどうするの?」
「僕はここで雑魚寝でもするよ」
「なんか、悪いよ・・・」
「いいっていいって、気にしないで」
というと、はつかさんは遠慮がちに「ありがとう」といいながら二階へ上がっていった。
はつかさんを見送った後僕はリビングに戻り電気を消して床に横になり体に毛布をかける。
「いろいろな事がありすぎてわけがわからないや」
真っ暗になったリビングで一人呟く。
そして、今日あったことを頭の中で反芻していたらいつの間にか眠りに落ちていた。
しかし、起きた僕達を更なる驚愕が襲う。
通りに出て見ると相変わらずきな粉が降り続いている。
それに辺りは未だ夜の闇に包まれている。
そして人は倒れたままで起きる気配が無い。
きな粉は本物の雪の様に降り積もり道に倒れた人々はその中に倒れて埋まっている。
「なによこれ・・・どうなっちゃってんの!?世界が止まっちゃったってわけ?」
はつかさんは頭を抱え床にへたり込んでしまう。
「うん、これはもう世界が停止したとしか言い様が無いね・・・」
僕はかろうじて言葉を返す。
しかし呆然とその場に立ち尽くことしかできない。
電気・ガス・水道はかろうじて生きているようだがテレビをつけても砂嵐しかうつらないし携帯も電話も繋がらない。
とりあえず、考えていても仕方が無い。
いつガスや水道が止まるとも限らないのでその前に腹ごしらえをする事にした。
「・・・一応、朝食になるのかな?この場合も」とのんきなことを考えながらハムエッグを作る。
僕の隣でははつかさんがサラダを作ってくれている。
ルークは庭へでて壁から引き抜いた剣で素振りをしている。
ルークが言うにはティアは相変わらず眠ったままだそうだ。
「どうなっちゃうんだろう、私達・・・」
サラダをプレートに盛り付けながらはつかさんがそう呟いた。
普段は元気なはつかさんが落ち込んでいる姿は見るに耐えない。
「とりあえず、朝食を食べてから皆で話し合おう」
僕は少しでも彼女の気を紛らわせようとそんな提案をした。
即席の料理がテーブルに並べられ皆が食事の席に着く。
「しかし、いい加減ティアがおきねぇのはきになるな・・・」
ルークはハムエッグをガツガツと食べながらそんなことを呟く。
そんな彼はいつもより心なし表情が暗い。
「そうなの?・・・病気とかじゃないんだよね」
と、はつかさんが聞く。
「ああ、ただ魔力を使い果たしちまっただけのはずなんだ」
「そうなんだ」
「それでも、いつもだったら翌日には目を覚ますはずなんだが・・・」
「心配だね・・・」
二人の表情は暗い。
僕は話題を変えようと二人が経験した話を聞くことにした。
「・・・てなわけで穴を抜けたらあんたらがいたんだよ」
はつかさんの話は前日に聞いてたからある程度はあくできてたけど、ルークの話をちゃんと聞くのは初めてだったので正直驚いた。まるでルークジーの世界の出来事だ。
しかし、僕はルークやはつかさんの話を聞きあることに思い当たる。
「もしかしたら、閉塞したこの状況を打開する事が出来るかもしれない」そう感じた。
話が一段楽した所で僕は皆に切り出した。
「ちょっと、皆に見てもらいたいものがあるんだ」
そう言うと僕は急いで自室へ行きパソコンを立上げ書きかけの物語をプリントアウトする。
そして、僕は自分が書いた物語をルークに渡した。
はつかさんも読みたいというのでもう一枚プリントアウトし彼女にも手渡した。
「・・・これってさっき俺が話したことティアねーか、何でお前が!?」
「まさか今書いたわけじゃねーよな?」と僕をにらむルーク。
「いや、違うよ・・・これは僕が書きかけていた物語なんだ」
僕の言葉を聞き「信じられねぇ・・・預言者かよ、お前」と呟くルーク。
「それと、はつかさんにはこれも見てもらいたいんだ」
僕はもう一枚の物語を取り出す。
そしてはつかさんに手渡す。
物語を読んでいくうちにはつかさんの顔が驚きに変わる。
「これって・・・私が「彼」としたことだよ・・・なんでそれをリョウ君が!?」
「やはり、はつかさんもか・・・」と僕は小声で呟く。
そして僕は確信に至る。
僕の物語が現実に干渉してしまっていることに。
僕は皆が落着いた頃を見計らって話を始める。
「ここにいる皆はすでに僕が書いた物語の根幹にかかわり重要な役割を果たしている」