住めば都 ~整形外科病棟~
ベッドの横には、緑色の細いストレッチャーのようなものが置いてあった。
「こちらに自分で移れますか? 自分で移るほうが痛くないように移れますからね」
「はい。大丈夫です」
移るときには緑の手術用のシーツ? のようなものを掛けてくれて、みんなから裸が見えないようにきちんとカバーしてくれた。
「ヨイショと」
痛みもなく簡単に移れた。緊張していたから痛さも分からなかったのかも知れない。
少し向こうの天井には無影灯の丸いライトが見えた。まだ点灯されていない。
あの下で手術が始まるのだな。いよいよだ。
医療ドラマや医療小説が好きな私は、自分の手術をしっかり見てやろうと思った。
「少し冷たいですよ」
といいながら、ナースが心電図を測る器具を取り付ける。指先には酸素を測る器具も付けた。
「酸素マスクを掛けますね」
と、頭から口元にマスクが当てられた。
「深呼吸をしてください」
昨日練習した深呼吸をした。
…………覚えているのはここまで。
いつの間にか麻酔が効いてきて、すっかり眠りに入ったようだ。自分の手術をしっかり見てやろうなんてとんでもない。全く見れないものだ。
事前の説明がしっかりなされていたので、大体分かったが、どんな風に手術されたのか、麻酔が効いた後の状況をDVDで見てみたいなと後で思った。
作品名:住めば都 ~整形外科病棟~ 作家名:ねむり姫